「ウィズコロナ」で企業から属人営業が無くなる日

デジタルで顧客と直接つながる

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新型コロナウイルス感染症に対する政府の緊急事態宣言の解除拡大を受け、産業界では経済活動の正常化に向けたフェーズに入る。しかし感染拡大が収束しても経済活動はこれまでのような水準に戻らない可能性が高い。特に営業活動はこれまで展示会や商談会などで直接に顧客と接してきた。そのスタイルも大きく変わらざるを得ない。「ウィズコロナ」の営業はデジタルでつながることがより重要になってくる。

日本郵政は郵便物配送のデジタル化を見据える。人工知能(AI)を活用した配送ルートの効率化、飛行ロボット(ドローン)などによる配送を想定。増田寛也社長は「人的ノウハウに頼るのではなくデジタル化を進める」と方針を示す。

展示場閉鎖や外出自粛などで、住宅部門の集客、受注に影響がでている旭化成は「ITを活用したデジタルマーケティングや生産性向上で新型コロナの影響を最小限に抑えたい」(柴田豊副社長)とする。

SUBARU(スバル)は、オンラインで新車販売の商談をする「シームレスショッピング」を活用するなど工夫を凝らす。元々、2000年以降社会人になった「ミレニアル世代」を取り込む米国での商談の仕組み。対面営業がしにくい状況で販売店での活用を広げ販売への影響を最小化する。中村知美社長は「改善の手を緩めずウィズコロナの対応に取り組む」と力説する。

「今回、デジタル化の必要性を痛感した」と三菱ケミカルホールディングス(HD)の越智仁社長は強調する。遠隔管理で工場のリスク低減やスタートアップ企業との連携を加速。「我々の仕事も100%デジタルでなければついていけなくなる」と危機感を示す。

リコーの山下良則社長は「OAメーカーからデジタルサービスの会社に変わる」と宣言する。デバイスとデジタルサービスを組み合わせた価値提供を進めると同時に、業務プロセスのデジタル化など社内のデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速する。セイコーエプソンの小川恭範社長も、アフターコロナの社会について「デジタル化の加速をキーワードとした変化が生まれる」と予測。「増加する在宅などでの印刷に対応したサービスの提供を強化する」と話す。

ウィズコロナでも売り上げを拡大していくためには、バリューチェーン全体を「顧客視点」でつないでいく必要がある。これまでの「製品視点」から「顧客視点」へゲームチェンジをする、その第一歩は「顧客を徹底的に理解する」こと。そしてその基礎となるのが顧客と接している「営業」の改革だ。

例えば製造業では、多品種化を伴う事業の拡大を効率的に進めるため、縦割りの事業部制が採られ、事業部ごとに営業部門が設置されている。商圏が拡大すれば、各拠点にも営業部が作られる。これは一般的な体制だが、顧客視点でビジネスを見ると、この組織構造がマイナス作用をもたらす場合がある。顧客が課題解決のために、製品や地域ごとに話をする相手が異なり、自分たちの状況を最初から毎回説明しなければならないとすると、顧客体験が著しく低下してしまうからだ。

営業は顧客の要件を的確に理解し、最適な提案を迅速に行う必要がある。しかし、顧客の要求レベルは高いため、技術に対する高い見識が求められる。経験豊富なベテラン営業部員は社内の技術部門や関係会社との協力体制を構築し商談を進められるが、経験の浅い営業はそうはいかない。

前時代的な「OJT」とベテラン営業の弊害

ベテラン営業だけに売上を頼る現状を打破すべく、新たなスーパー営業の採用を試みるが、人材不足の現代、そうそう良い人材が見つかるものでもない。今いる人員で売上を拡大するには営業スキルの底上げを図るしかなさそうだが、果たしてどのような教育を行っているかというと、ベテラン営業の「背中を見て覚える」という前時代的な「OJT」しか行われていない。

ベテラン営業のやり方は本人にしかわからず、全国でバラバラ、ブラックボックス化している。結果、大手製造業は変革が進まず、中小製造業はノルマに追われる新入社員が疲弊し退職、定着しないという負のスパイラルに陥っている。「営業組織属人化問題」を解決するデジタル変革は企業存続の生命線になる。

日刊工業新聞2020年5月22日の記事を加筆・修正

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