今こそサプライヤーと相互繁栄だ!トヨタの「原価低減」懐深く

鋼材の調達などで新基準

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「仕入れ先との共存共栄・相互繁栄の実現」がトヨタの調達の基本理念(写真は豊田章男社長=同社公式ページより)

トヨタ自動車が原価低減活動で、サプライヤーとの連携を深化させている。両者で知恵を出し合い、原価低減に向けた細かなすり合わせを推進。各社の困りごとをくみ取りながらカイゼン活動に厚みを持たせている。自動車業界では電動化や自動運転など新技術を巡り覇権争いが激化している。トヨタは連綿と受け継がれる原価低減活動をテコに、難局を乗り切る構えだ。

「仕入れ先との共存共栄・相互繁栄の実現」がトヨタの調達の基本理念だ。サプライヤーと協力し、各工程での緻密な製品の作り込みで競争力を高めてきた。その分原価はかかっていたが、市場が右肩上がりの時代は利益を確保できていた。

だが、国内市場の縮小均衡が進み、サプライヤーの負担が顕在化。一方のトヨタも、自動運転など新分野で開発原資の確保が急務だ。理念を守るためにも、原価低減活動の重要性が一層増している。

トヨタはこの1―2年、車に使う鋼材の調達におけるカイゼン活動を強化している。最も大きいものは、市場成長が続いた時代に策定した調達基準の見直しだ。車のボディーに使う鋼板では、ロール状のコイルの受け入れ重量を従来は8トン以下に制限していたが、今後10―20トンに引き上げる。制約の撤廃により鉄鋼メーカーは切断の手間を省ける。トヨタが調達する鋼板は数百種類あり、半分ほどに新基準を適用することを決めた。新たに発注する鋼板から、順次切り替える計画だ。

鋼板についた傷の深さの基準も緩める。傷の部分に印をつけ、そこを避けてプレス加工すれば品質を担保できると判断した。今後は屋根など見えづらい部品の過剰基準の見直しや、機能面に影響のない鋼板裏面の傷の条件緩和も検討していく。

品目ごとに生産の得意なラインへの生産集約も実施。これらの取り組みの対象は、トヨタが調達する鋼板のうち数%にあたる。特殊鋼では規定の長さに届かない棒鋼の受入量を増やす。これにより棒鋼の生産性は3%向上すると見込む。このほか発注内示リードタイムの半減や鋼材中継地での在庫圧縮などにも着手している。

背景には国内新車市場の縮小や、鉄鋼需要の減少による鉄鋼メーカーの収益悪化がある。トヨタの調達担当者は「トヨタの車づくりの競争力を高めるには鉄鋼メーカーと一緒になり、互いの現場に入りこんでカイゼンに取り組まねばならない」と力を込める。

自動車部品でも部品メーカーと一体になって、原価低減活動を深掘りしている。トヨタは2010年から、中長期の視点で競争力ある部品づくりを進める「良品廉価コストイノベーション(RRCI)」を始めた。「原価を作り込む上で必要な要素や阻害要因を本音で話し合う」(トヨタ幹部)のが狙いだ。

18年度に開始した第3期目の取り組みでは、20年代前半に市場投入する車種に活動成果を反映する方針。シャシーやボディー、電子部品など品目ごとにコスト目標を設定し、「仕入れ先と協議しながら各部品の競争力を磨き上げる」(同)考え。

19年4月にはティア1(1次取引先)の調達担当がトヨタに出向し、ティア2やティア3が抱える課題の洗い出しにも着手した。トヨタ生産方式(TPS)による工場のカイゼンに加え、事業承継や人手不足といった課題を側面支援する体制を整えた。サプライヤー支援のすそ野を広げ“オールトヨタ”で競争力向上を目指す。

「国内生産台数の減少リスクがある中、日本のモノづくりを守る」(トヨタ幹部)という精神が、側面支援の根底に流れる。過剰な性能要求やムリ・ムダを取り除くことで、過剰在庫の削減や環境負荷の低減を加速。サプライチェーン(部品供給網)全体の最適化を指向していく。

(名古屋・長塚崇寛、政年佐貴恵)

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日刊工業新聞2020年3月26日

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