新型コロナ「パンデミック」を乗り越えろ!治療薬・ワクチン開発最前線

既存薬、有効性の確認急ぐ。製薬各社は知見を総動員

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新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、治療薬やワクチンの開発が相次いで始まっている。ウイルスが確認された当初は感染の広がりは限定的との見方が大勢を占めていたが、欧州で患者が急増するなど早期の収束は見通せない状況だ。世界保健機関(WHO)もついに新型コロナの「パンデミック(世界的大流行)」を表明した。有効な治療薬やワクチンを求める声は日々高まっており、開発の進展が注目される。

新型コロナが猛威を振るう中、知見を持つ世界の製薬会社が治療薬やワクチンの開発を相次いで表明しており、政府や医療関係者が高い関心を寄せている。治療薬やワクチンが開発されれば、これまでの防疫による感染拡大防止策とともに、ウイルスに対する有効な対応策が打ち出せるからだ。

治療薬の開発で活発なのは、既存の薬剤が新型コロナウイルス感染症(COVID―19)に対して有効かどうかを確かめる取り組みだ。当局の承認を受けた既存薬は人に対する安全性が過去の臨床試験で確認されており、開発期間を大幅に短縮できることが利点だ。抗ウイルス薬を中心に各国で臨床試験が既に始まっており、早期に結果が得られる見込みだ。

エイズ・インフル・エボラ熱…抗ウイルス薬検証

候補の一つである米アッヴィの抗エイズウイルス薬「カレトラ(ロピナビルとリトナビルの配合剤)」は、ウイルス増殖に関与する「プロテアーゼ」という酵素を阻害する薬剤だ。研究機関の観察下で、日本や中国などで患者への投与が始まっており、有効性の確認が進む。

富士フイルム富山化学(東京都中央区)の抗インフルエンザウイルス薬「アビガン」も検証対象だ。アビガンはウイルスの「複製」を助ける「RNAポリメラーゼ酵素」を阻害する薬剤で、COVID―19に対する有効性も期待される。アビガンは一般には流通しない備蓄薬で、国が新型や再興型インフルエンザの流行に備え、200万人分を確保している。効果が示されればすぐに広範囲に供給できることが利点だ。富士フイルムは政府要請を受けて増産を検討しており、収束が長引いた場合でも安定供給が揺らぐ可能性は低い。

米ギリアド・サイエンシズの抗ウイルス薬「レムデシビル」は、WHOが治療効果の可能性を強調したことで世界中の関心を集めた薬剤だ。かねてエボラ出血熱の治療を目的に開発してきたが、2月下旬にCOVID―19を対象とする二つの第3相臨床試験を実施すると発表した。

試験は重症患者400人、中度患者600人が対象で、アジアを中心に診断例の多い国の医療機関が参加。4月には中国の結果が出る見通しだ。しかし、レムデシビルは開発段階で、いずれの国でも承認は得ていない。試験が終了しても承認審査が必要で、本格的な供給には一定の時間が必要だ。

早期の新薬開発に挑む

既存品に頼らずに新規の開発を目指す動きもある。武田薬品工業はCOVID―19の治療薬として、新たな血漿(けっしょう)分画製剤を開発する。独自技術を活用することで早期に臨床試験に入れる見通しで、9―18カ月で供給を目指す。

武田薬品が開発に取り組むのは「TAK888」。COVID―19から回復した人の血漿を利用してつくる薬剤で、原因ウイルスに対する免疫機能を高める効果があるという。この血液由来の医薬品技術は武田薬品が19年に買収したアイルランド製薬大手シャイアーが強みとして抱えていたもので、長年のノウハウが集約されている。TAK888の製造もシャイアーが先端の整備を進めていた米ジョージア州工場を活用する計画で、関係者の期待は高い。

ワクチン開発も活発に、オールジャパンでも動き

新型コロナのワクチン開発も活発だ。ワクチンは感染症の予防に用いられる医薬品。体内に無毒化や弱毒化した抗原を投与することで病原体に対する抗体生産を促し、免疫を得る仕組みだ。有効なワクチンが開発されれば感染拡大の強力な抑止力になる。市民だけではなく、前線に立つ医療関係者や防疫関係者を感染から守れることも有益だ。

現在、メガファーマと呼ばれる米ジョンソン・エンド・ジョンソンや仏サノフィ、英グラクソ・スミスクラインなどが開発に乗り出しており、知見を持つ各国のバイオベンチャーもこれに続く。

海外企業が先行する中で、オールジャパンによる新型コロナのワクチンの共同開発が公表され、大きな話題となった。主導するのは、大阪大学発のバイオベンチャー「アンジェス」だ。研究には阪大が参画し、ワクチン製造はタカラバイオが担う。

共同開発が関心を引いたのは、ワクチンの形態にある。一般的なワクチンはウイルスを鶏卵で培養するが、3者が取り組む「デオキシリボ核酸(DNA)ワクチン」はウイルスを製造に用いないことが特徴だ。アンジェスの山田英社長は「危険な病原体を一切使わないため安全で、短期間に大量生産できる」と自信を見せる。

DNAワクチンは、「プラスミド」と呼ばれる環状DNAを利用する。新型コロナの表面には突起状の「スパイクたんぱく質」が発現している。このたんぱく質の遺伝子をコードしたプラスミドを接種することで、体が同たんぱく質を抗原として認識する。その結果、体内に抗体がつくられ、感染や重症化を抑制できるという。

鶏卵法は、ウイルス分離からワクチン製造まで5―8カ月程度。今回の手法では、これを6―8週間に短縮できると見込む。既にワクチンの設計を終えており、早ければ6カ月で、人で安全性や有効性を確認する臨床試験に移れるという。

(小野里裕一)

日刊工業新聞2020年3月13日の記事から抜粋

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