話題のインフル薬「ゾフルーザ」、誕生の裏のエイズ治療あり

話題のインフル薬「ゾフルーザ」、誕生の裏のエイズ治療あり

 全身にわたる痛みや長引く高熱などをもたらすインフルエンザ。1918年―19年に発生した「スペインかぜ」は、全世界で数千万人を死に至らしめた。90年代に入り、タミフルやリレンザなどの治療薬が出現。ようやく人類が対抗できるようになった。そして2018年、既存薬と異なり経口服用1回に的を絞った治療薬「ゾフルーザ」を塩野義製薬は生み出した。

 新たなインフルエンザ治療薬を創出するべく07年、研究を開始した。この新薬開発を語る上で外せないのが、13年に販売を始め塩野義の屋台骨になっている、抗エイズウイルス(HIV)薬「テビケイ」だ。テビケイとゾフルーザの標的とする各酵素の活性中心の構造が似ていることから、テビケイで培った技術を新たな治療薬に活用することにした。経営戦略本部経営企画部プロダクトマネジメント室の山口理加インフルエンザグループ長は、「テビケイがあったからこそ、水平展開でゾフルーザが創出できた」と話す。

 創薬の探索から始まり、ゾフルーザの有効性を検証する臨床試験に着手するまで約9年かけ、臨床試験は約3年で完了。ただインフルエンザは季節性の疾患のため、限られた時間で臨床試験の実施と解析をする必要があった。「(他の医薬品と異なり)通年で臨床試験を組めないので苦労した」(山口グループ長)と振り返る。

 臨床試験では、服用1日後に半数の患者でウイルス検出限界以下に到達。速やかなウイルス減少が見られるなどの結果を得た。作用機序の新規性などが認められ、厚生労働省により、早期実用化を目指す先駆け審査の対象に指定。申請から製造販売承認までのリードタイムを大幅に短縮できた。

 インフルエンザの治療だけでなく、新たな用途についても検討中だ。感染者がいる家庭で服用してもらい、感染予防の効果の有無を調べる臨床試験を進めている。販売面では、スイス・ロシュとの提携を生かし、米国など海外でも展開していく。
「ゾフルーザ」の研究者ら。中央が山口理加インフルエンザグループ長

【製品プロフィル】
 経口服用1回で治療が完了する世界初のインフルエンザ治療薬。タミフルやリレンザといった既存薬と異なる作用を持ち、ウイルスの増殖サイクルの初期段階を止める。血中濃度半減期も既存薬に比べて長い。非臨床試験の結果、A型やB型のインフルエンザウイルス、タミフルに耐性を持つウイルスなどにも効果が認められた。

(文=大阪・石宮由紀子)

  

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