認知度8割、でも利用者は5%…家事代行サービスの基礎を知る

変わりゆく?家事 #6 家事代行サービス

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2016年に大ヒットし、今なお人気のあるドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』。主人公みくりの職業は独身男性宅の掃除や料理を引き受ける「家事代行サービス」だった。ただ、知名度が向上する一方で、実際に使用したことのある人は5%程度にとどまる(※)。
 今回は家事代行サービスを大きく2つに分けて考え、「自社でサービス提供者(家政婦さん)を雇用し派遣する企業」としてベアーズ(東京都中央区)、「自社でサービス提供者を雇わず、利用者とのマッチングサービスを提供する企業」としてタスカジ(東京都港区)を取材した。

【ベアーズ】

家事代行サービスが日本でまだ一般的でなかった21年前に創業したベアーズ。東日本大震災以降の「家族の時間を大事にしたい」という風潮や、女性活躍推進などの時代背景に徐々に後押しされ、家事代行サービスが家事負担軽減のための選択肢の1つになってきた。

整然とした雰囲気を提供

同社の強みは、家事代行スタッフを雇用、教育しサービスを提供している点だ。入社時の研修だけでなく、定期的な研修で技術のブラッシュアップや情報共有を行っている。「家に他人が入る抵抗感を少しでも和らげるためにも、スタッフの挨拶や身だしなみをきちんとすることは重要。また仕上がりに感動してもらえるサービスでないと継続利用にはつながらない」とマーケティング本部長の後藤晃氏は話す。サービス利用者に“ホテルのように整然とし清潔感溢れる雰囲気”を提供することを目指している。

ベアーズの後藤晃氏

1万6千人ほどいるスタッフは女性がほとんど。労働力不足が叫ばれる業界だが、同社では国家戦略特区を利用しフィリピンから160人を採用している(2020年1月現在)。「フィリピンは“家政婦大国”でレベルも高い。家政婦大学を卒業した人材を高倍率で採用している」(後藤氏)。

スキルアップや情報共有のための研修

広がる利用者

現在スポットと定期サービスがあり、売上の80%が定期利用だ。月2回以上、隔週や毎週、1回あたり3時間が多い。創業当初は高所得者がボリュームゾーンだったが、世帯年収800~1000万円で子育て中の共働き世帯の利用がここ4~5年で増加している。首都圏だけでなく、全国的に同じ傾向がみられる。利用者の幅が広がりつつある。

利用者のニーズは「家事の時間がない」というものがほとんど。ただ、「家事を全部丸投げして楽をしたい」というよりも、「理想の高い家事をしたい」というニーズが多い特徴がある。「『手が回らないけれど、本当はもっと家をきれいにしたい』という人が掃除を頼んだり、『掃除は好きだが料理は苦手』ということで料理代行を頼んで思いっきり掃除をしたり、といった使い方をされている」(後藤氏)。
 同社でも、家を大切にし、より豊かに暮らすためにサービスを利用する、というプラスのメッセージ性を重視。家事をした先で生み出す気持ちを大切にすべく、毎月優秀スタッフを表彰し、顧客からの感謝の手紙を発表するなどの取組みをしている。

家事とは何か?

家事代行サービスは体験すれば良さが分かり、リピートにつながると後藤氏は話す。とはいえ、サービスに興味はあっても依頼したことのない人に一歩を踏み出してもらうのにはまだハードルがある。「自分でやれば無料なのに、高い料金を払って家事をしてもらうのは…」という声もある。
 家事の定義や価値を知らなければ、家事代行も頼めない。そこで同社は、まず家事の価値をきちんと認識してもらうことが重要と考えた。オンラインの家事講座を設けたり、メディアで家事ノウハウを伝えたりといった活動を通して、家事の価値を知ってもらう活動を推進。そこから質の高い家事を実現するためにプロにアウトソースする、という提案につなげるマーケティングを行ってきた。

「家事大学」はオンラインとリアルの講義形式を用意
 「一人暮らしの世帯では1週間に5時間家事をしているといい、世帯人数が増えればその分家事の時間も手間も増える。これを仕事の時給に換算すると家事に費やされるコストが意外と高いことがわかる」(後藤氏)。

さらに近年力を入れているのは他社との連携だ。例えばダイソンと組んだ企画では、家事代行を抽選でプレゼントし、そのサービス中に掃除機を家庭で使用してもらい、購買につなげるというキャンペーンを実施した。福利厚生や不動産関係との連携も進めている。今後は高齢者や要介護者向けの連携も強化したいという。

もっとハードルを下げるために

また2019年8月には大型マンションに家事代行スタッフが常駐し、アプリでサービスを依頼できる「マウチ」をリリースした。従来は移動時間や交通費も価格に含まれていたが、常駐型であればその分のコストを削減でき、10分500円からのちょっとした家事も依頼できる。さらにアプリを通じた物販も可能で、「サービスで使ってもらって良かった洗剤や道具などを購入したい」というニーズにも対応できる。利便性を高めると同時にサービスに広がりがでる。

従来、家事は自分でやるべき、という無意識の思い込みや暗黙の文化のようなものがあった。しかし世の中的にも家事シェアの概念が広がっている。後藤氏は「世代がもう一回りすればさらに意識が変わっていくと考えている」と成長に期待を込める。

【タスカジ】

「家事代行サービスを頼みたいが、気軽に頼めない」―タスカジ社長の和田幸子氏が仕事と育児の両立に忙殺されていた2008年ごろ、周囲には同じように両立に日々奔走する女性が数多くいた。しかし現在ほど家事代行サービス事業者は多くなく、価格も高く、日常的に利用するのは難しかった。
 当時はちょうどAribnbなどのシェアリングエコノミーが話題になってきたころ。「シェアリングであれば、価格を下げることと、働き手が値下げ圧力を受けないことを両立させる仕組みができるのでは」と考えた和田氏は、2013年に家事代行マッチングサービス「タスカジ」を立ち上げた。

タスカジの和田幸子氏

家政婦が身近に

サービスの認知が一気に広まったきっかけは、やはりドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」。「家事代行サービスを頼んでいたのは一般的なサラリーマンの男性で、サービス提供者もごく普通の若い女性。今までの『家政婦』のイメージが大きく変わり親近感がわいたようだ」(和田氏)。2020年1月には利用者が6万5千人、家事代行サービス提供者(タスカジさん)の登録は2250人となっている。

利用者のボリュームゾーンは30代~40代で、全体の8割を占める。最近ではそれ以上の割合も増加しており、子どもが親世帯向けに依頼するパターンが多いという。
 主な依頼内容は料理、掃除だ。「料理では作り置きが人気で、多い人だと3時間で20品作ることもある」(和田氏)。またスポットでは整理整頓もよく利用されており、大掃除やモノが増えてきたタイミングで収納方法を相談したいというニーズに応えている。

人気の作り置き

利用者の年代が偏っている一方で、タスカジさんは20代~60代と幅広く登録されている。家事経験を活かす40~60代がいる一方で、20代は調理勤務経験などの専門技術を売りにしている人が多い。登録者のうち7割が副業(主婦との副業も含む)としてタスカジさんをしている。

 

家事代行サービスの提供内容はタスカジさん個人によるところが大きいが、同社としてもスキルアップができるような仕組みづくりに注力している。ウェブ上にタスカジさん同士が交流できるコミュニティをつくり情報交換を促し、「タスカジゼミ」として同社が認定したトップ22名により毎月20件近く講座を開くなど、活発な交流が行われている。

口コミの強さ

「家事代行を利用するきっかけとして最も効果的なのは、友人の体験談を聞くこと」と和田氏は話す。ライフスタイルの近い人が利用しているとイメージが湧きやすい。そのため同社ではレビューを重視しているほか、利用者からの要望により紹介割引制度を設けた。 「何よりも口コミが強力。また、友人宅にタスカジさんが来ているところを見学したり、ホームパーティの料理をタスカジさんが作ったりと、実際の家事代行の様子を見ることで利用につながっているようだ」(和田氏)。

 家事代行サービスは業者の増加とともに、料理、ベビーシッターなど専門化が進みつつある。和田氏は今後さらに家事代行サービスのバリエーションを増やしていくことが必要だといい、「現在は3時間から利用できるが、単身者向けに2時間のサービスなど細かなニーズにも対応したい」と話す。自治体などとの連携も進める考えだという。

(※)野村総合研究所 「平成29年度商取引適正化・製品安全に係る事業(家事支援サービス業を取り巻く諸課題に係る調査研究)」より

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COMMENT

昆梓紗
デジタルメディア局
記者・編集者

サービスの認知率は8割を超えるものの、実際の利用が増えない家事代行サービス。「知ってるけれど、なんとなく不安」という人が多いように感じます。テレビ番組でもサービス提供者のプロ技などはさかんに伝えられていますが、それと実際の利用が結びつかないのは、「なんとなく不安」が払拭されないせいではないでしょうか。どういうサービスか、どのような人が利用しているか、まず基本を知ることも必要だと感じています。

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