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共同印刷からTOMOWELへ、「容器買収」で挑む構造改革

デジタル時代 総合印刷の進む道(4)共同印刷・藤森康彰社長インタビュー

―中期経営計画の2年目です。進捗(しんちょく)は。

「全体ではおおむね計画通り。ラミネートチューブや業務委託(BPO)などが好調だ。出版や商業印刷は営業損失の幅が大幅に減少した。施策は打っているので(黒字への)逆転に期待している」

―2019年はクレハのブローボトル事業買収や国内外で新工場完成など生活・産業事業で大きな動きがありました。

「もともと当社でブローチューブの製造はしていた。ブローボトル事業の買収を機に、知見を生かして数年かけて今までにないブロー容器を作れたらと考えている。19年12月にインドネシア子会社の工場がジャカルタ近郊にできた。東南アジアにはインドネシアとベトナムに拠点があるが、周辺にもまだこれから伸びる市場がある。どの国に出るかは今後決めていく」

―生活・産業事業の課題は何ですか。

「軟包装は18年に完成した守谷工場(茨城県守谷市)の新棟がまだ十分に立ち上がれていない。オペレーターの技能習得に時間がかかり、内製化すべきところが外部委託になった。順調な事業運営を早く実現することが課題だ。環境配慮型製品の開発も、素材メーカーに投げたままではなく、容器メーカーとして提案できないか検討や連携が必要。有効な技術を持つ企業を探したり、研究機関や外部の力を使ったりしながら進めていきたい」

―紙媒体の市場縮小で従来型の印刷には苦しい環境が続きます。

「商業印刷を販売促進と組み合わせて伸ばしたいが、今が胸突き八丁。モノづくりという強みはあるものの、販促市場に対する分析がまだ足りない。固定費の削減も重要。従来の印刷工程に必要な人員は減っているので、生活・産業事業への配置転換もかなりの勢いで進めている」

―20年の需要見込みは。

「東京五輪・パラリンピック開催で販促関連は需要が出る。海外から相当数の人が訪れるので交通系ICカードも増えるが、一時的な増加なので生産体制に大きな投資はしない。効率の向上で生産スピードを上げていく」

【記者の目/改革進むも課題残る】

法人用のプリペイドカードサービスや電子書籍向けの画像処理技術など今後を見据えた新サービスを増やしており、事業基盤を改革しているが中長期な課題も残る。需要増が見込まれるBPOは人工知能(AI)の活用が避けられない。生活・産業事業は医薬品用のパッケージも軟包材と同様に成長が期待されているが、試験期間の長さから採用拡大にはまだ時間がかかりそうだ。(国広伽奈子、この項おわり)

共同印刷社長・藤森康彰氏
日刊工業新聞2020年2月7日

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