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大日本印刷が“第3の創業”で手応えが出てきた事業

デジタル時代 総合印刷の進む道(2)北島義斉社長インタビュー

―2020年の見通しについて。

「業績は19年12月まで順調に推移しており19年度の目標数値は何とか達成できそうだ。(外部環境は)不安定な中東情勢がどうなるか。現地に直接関わる事業はないが、過去の原油高では石油化学製品の原材料価格の高騰があった。米中貿易摩擦や日韓関係にはそこまで影響を受けていないが、これ以上悪化すると海外事業に影響が出る可能性もある」

―国内景気はどうみますか。

「消費税率引き上げの影響はあっても東京五輪・パラリンピックまでは持ちこたえそう。だが、その後の景気への影響は心配。異常気象や災害も不安要素。対策や自治体との連携はさらに深めたい」

―24年度にモビリティー領域で売上高1000億円の目標を掲げました。

「“第3の創業”を掲げ約5年経つが、手応えが出てきた一つが自動車関連。リチウムイオン電池用バッテリーパウチやタッチ操作できる加飾パネルなど提案できる製品が増えている。実装に時間はかかるが、今後採用は増えていく。当社だけではできないことも多いのでパートナーを組む機会も増えるだろう」

―研究・開発や設備への投資、M&A(合併・買収)の計画は。

「設備や研究・開発への投資、M&Aで合計1000億円という形を続けてきた。今後も同様に続けるが、M&Aで良い案件があればその分増えていくだろう。(モビリティー領域の売上高目標はあるが)配分については、モビリティー関連への投資が特に多くなるというわけではない」

―事業の選択と集中の判断基準は何ですか。

「(継続の)判断基準はコア事業として成長の見込みがあるか、もしくはニッチでも強みを生かせる分野。(業務委託やコーティング技術を生かした製品など)強化する分野では、他業種から配置転換した人材の教育や採用などに引き続き力を注ぐ」

―人事制度や働き方の改革の今後は。

「20年度はシニアの雇用など検討中だった部分にも取り組む。第3の創業には、制度も一緒に変えなければ社員は対応できない」

【記者の目/働き方改革欠かせない】

モビリティー関連ビジネスは異素材を簡単に接着するフィルムやスマートフォンを使った電子カギ、電気自動車(EV)向けのワイヤレス充電コイルなど範囲が広い。これまでに培った技術と総合力で今後どこまで広げられるかが気になる。働き方改革も“オールDNP”で動くには欠かせない要素だ。(国広伽奈子)

大日本印刷社長・北島義斉氏
日刊工業新聞2020年2月4日

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