サントリーグループはかく戦う、新浪社長の商魂
―2019年を振り返って総括してください。
「10月に消費増税があり、その対策と乗り切る仕組みづくりを進めた。政府の緩和策もあり、増税はうまく乗り切れているようだ。当社グループではビール『ザ・プレミアム・モルツ』で『神泡』(きめ細かい泡)のPRをパワーアップしたほか、ペットボトル飲料『クラフトボス』や緑茶飲料『特茶』などユニークな商品を提供できたと思う」
―消費の動向に変化を感じますか。
「消費者は将来不安を抱えており、もともと消費は強くない。その中でも良いモノは買ってもらえることは確か。優位性のあるモノを集中して開発することが大切だ。このためデータ分析を商品の差別化やユニークさに生かす取り組みを進めており、設立して2年ほどになるデジタルマーケティング本部の効果も出てきた」
―20年の景気動向をどうみていますか。
「中国も米国も減速していく懸念があり、仮にそうなれば日本も苦しくなる。さらにリスク要因として北朝鮮が心配だ。日本では東京五輪があるので良くなるが、閉幕後の景気も気になる」
―どんな課題に取り組みますか。
「一つはサステナビリティの取り組み。特にプラスチック問題では30年までにグローバルで使用するペットボトルをリサイクル素材・植物由来素材に切り替える目標で、積極的に進める。二つ目は『健康』を軸にした商品特性の付加価値化。高血圧や糖尿病、認知症といった慢性病の予防と健康寿命の増進が重視される。まだまだ予防に対する意識が低い面があり、『特茶』やサプリメントなどの健康食品を拡充しアピールする。またアルコールを控える傾向も強まるため、クラフトマンシップのある高付加価値商品への移行も進めたい」
―今後のグループ経営で何を成長ドライブに位置付けていきますか。
「アジアへのシフトを加速する。中国や東南アジアさらにインドを加えて、健康食品・飲料、スピリッツなど総合飲料で展開していく。30年には日本に比べ圧倒的に大きくしたい」
【記者の目】
ビール事業では「神泡」の展開や第三のビール「金麦」ブランドで攻勢だった。ただ市場の縮小が続き、酒類全体でも今後の大きな伸びを見込むのは難しい。そこで成長戦略としてアジア市場に着目し、拡大を目指す。中国やインドといった巨大市場は魅力的だが、複雑な市場でもあり、どう切り崩していくかが注目される。
(井上雅太郎)