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「BOSS」の味を決める“焙煎男”のこだわり

「豆と対話しながら」
 サントリーコーヒーロースタリー(神奈川県海老名市)は、サントリーのコーヒーブランド「ボス」向けコーヒー豆の焙煎(ばいせん)などを手がける。このほど海老名工場(同)を新設、稼働した。高機能焙煎機を導入し、年産能力を1万7000トンと従来比1・7倍に引き上げた。大西達司生産部取締役部長に焙煎技術へのこだわりと人材育成のポイントなどを聞いた。

 ―海老名工場が稼働したことで、生産増に加え、多様な焙煎にも対応するそうですね。
 「焙煎はコーヒーの味わいを決めるキー工程。この工程を委託ではなく、自分たちですることは大切な作業となる。これまで、従来以上のいろいろな焙煎がしたいと思っていた。今回、高機能機を導入したことで熱風のコントロール幅が広がり、30万通りと従来比で3倍の香味づくりが可能になった」

 ―焙煎でのこだわりは。
 「焙煎が“工業”のようになるのは嫌だ。かつては豆の爆ぜる音を聞き、豆と対話しながら作業した。今は自動化が進み過ぎたのが少し残念な気もする。ただ、品質にこだわりながら、開発者の思いを、生産が引き継ぐことが重要ということは変わらない」

 ―コーヒー豆の焙煎の難しい点は。
 「農産物であるため同じ袋の中でも一粒一粒が異なる。焼き方は方程式にできないだけに、オペレーターは何度も焼いて調整が必要になる。開発コンセプトの味のイメージを頭で描きながら、焙煎を完成させるには苦労がいる」

 ―一人前のオペレーターを育てるのは時間がかかります。
 「焙煎のオペレーションだけなら3カ月で習得できる。しかし、トラブルが起きた時でも24時間対応できるようになるには数年はかかる。基礎(スキル)を現場で使いこなす努力が必要になり、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)で習得させている。実践で身に付くと楽しさが増す」

 ―人材育成で重視しているのは。
 「コミュニケーションだ。焙煎は客の視点で考え、現場がチームとして情報を共有し、仕事する姿勢が大切。人材育成では、これを理解できるように接している」
大西達司氏
日刊工業新聞2018年8月16日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
サントリーグループは缶コーヒーメーカーの中では珍しく、自社焙煎工場を保有している。その強みを生かすため、大型投資を実施した。高機能焙煎機の導入で、生産増強とともに香味づくりの幅を広げた。さらに世界初という実機と同じ機能を持つ25分の1スケールのパイロット焙煎機も導入。スピーディーでタイムリーな味わいづくりが可能になるという。大西取締役部長が「豆と対話しながら焙煎を完成させる」という姿勢が、ヒトづくりにも生きている。 (日刊工業新聞・井上雅太郎)

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