「安倍語録」で振り返る2019年の日本経済、未来は明るい?暗い?
令和時代が始まった2019年。安倍晋三首相は主要20カ国・地域(G20)首脳会議(大阪サミット)の議長を務め、米国や中国、韓国などとの首脳会談に臨んだ。「消費増税」が争点の参院選で勝利し、第4次再改造内閣を発足。この26日には、12年に政権復帰して7年がたった。ただ相次ぐ閣僚辞任や「桜を見る会」問題で支持率が急降下。数多くの課題が20年へと持ち越される。本紙が扱った言葉から安倍政権と日本経済の1年を振り返った。
「成長のエンジンはもはやガソリンではなくデジタルデータ」
1月23日、スイスでの世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で「信頼性のある自由なデータ流通」(DFFT)の重要性を提唱。議長を務めた6月のG20大阪サミットでは、データの国際ルール整備を進める「大阪トラック」を始めた。
「人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つ」
5月に施行された新元号「令和」を4月1日に発表し、その意味を説明した。約200年ぶりの皇位継承。10月22日の「即位礼正殿の儀」は約180カ国の要人らも参列、“改元外交”を繰り広げた。
「かつてなく強固であり、世界で最も緊密な同盟」
5月27日、都内でトランプ米大統領と会談し、現在の日米関係をこう強調した。焦点だった貿易協定交渉の第1弾は9月に妥結。追加関税発動は回避されたが、肝心の自動車・部品の輸出関税撤廃は継続協議となった。
「成長戦略こそアベノミクスのエンジン」
6月5日、政府の未来投資会議で語った。12月19日には20年の新成長戦略に向けた「中間報告」をまとめ、オープン・イノベーション促進策、運転支援機能搭載車の運転免許制度などを盛り込んだ。
「対立ばかり強調される中、共通点や一致点を見いだした」
6月30日閉幕したG20大阪サミットで「自由、公平、無差別で透明性」をうたった首脳宣言を採択。トランプ米政権が反発する「反保護主義」の表現は盛り込めなかった。海洋プラスチックゴミを50年にはゼロとする「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」などで合意した。
「景気の下振れリスクには躊躇(ちゅうちょ)せず、機動的かつ万全な対策を講じる」
7月22日、与党が勝利した参院選を総括し、安定した政権運営の決意を述べた。米中貿易摩擦や英国の欧州連合(EU)離脱などで先行き不透明感が漂っていることを認めた。
「社会保障を全世代型に転換する安定的財源」
9月11日、第4次安倍再改造内閣発足にあたり、10月の消費増税の使いみちを説明した。「次元が異なる政策が必要」とする全世代型社会保障で検討会議を設置。12月には「年齢でなく応能負担」などとする中間報告をまとめた。
「明日への希望を生み出すのが政府の責任」
10月21日、台風19号で大きな被害を受けた長野市を視察。中小事業者らの事業再開を支援すべく、11月には「対策パッケージ」をまとめた。東日本大震災での被害に続く、宮城、福島県などの被災者に手厚い支援策を打ち出した。
「韓国側の責任で解決策を示すべきだ」
12月24日、中国・成都で韓国の文在寅大統領との会談を行った。最大の懸案である元徴用工問題について、韓国に現在の国際法違反の状況を是正するよう要請。両国の対話継続で一致したが、解決は20年に持ち越された。
(文・山中久仁昭)