文政権では解決困難、日米で“韓国の離反”を見据えた新たな安保体制を

「(物を欲しがる)駄々っ子が、ついに棚(協定)まで壊した」

 日韓の対立が泥沼に陥っている。韓国が軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄したことで、日本にとって韓国は北東アジアの秩序を守る友好国なのか問われる事態となった。安全保障や経済交流における深い溝は、文在寅政権が2022年の任期まで続く限り、解消される可能性は低い。日本は対立する隣国とどう向き合い、政治・経済の安定化を図るのか。短期的な解決は難しい。

 韓国が日本を軽んじる背景には、経済における日本の比重が低下していることがある。長らく日本は韓国の輸出相手国として米国に次ぐ位置を占めたが、近年は中国が台頭して首位になり、日本は5位まで下落した。マーケットの魅力が徐々に低下した結果、日本への政治的な配慮もなくしていったようだ。

 むしろ文政権の中では、日本は南北分断を招く存在にさえ映っている。北朝鮮との融和政策を進める韓国に対し、日本は安全保障を重視して米国に同調。経済政策で失敗し、南北融和も停滞していた文政権にとって、日本の貿易管理の措置は、反日感情を利用し、支持率を回復できる好機となった。この文脈で考えれば、協定の破棄は当然の流れと言える。

 日本政府の受け止めは冷静だ。「(物を欲しがる)駄々っ子が、ついに棚(協定)まで壊した」(政府高官)と、指摘する声も聞かれる。また、韓国は秋波を送る北朝鮮からも突き放される。文大統領は15日、夏季五輪の共同開催や45年の南北統一を訴えたが、北朝鮮は「米韓軍事演習時に、平和という言葉をどんな体面で吐き出すのか。本当にずうずうしい人だ」と切り捨てた。

 韓国の感情的な報復措置に振り回される日本の産業界は先行きを懸念する。日本製品の不買運動の影響は不透明だが、訪日韓国人に依存する地方の観光地では局地的に経営が悪化する恐れがある。

 文政権は反日世論を利用して来春の総選挙を勝利したい意向だ。だが国内ではGSOMIA破棄で賛否が分かれ、日米両国からも批判される。

 文大統領が内外で孤立すれば、なりふり構わずに北朝鮮や中国に与(くみ)しかねない。北東アジアの秩序が揺らげば、アジア市場で稼ぐ日本企業の行動にも制約が生じる。

 東京大学東洋文化研究所の佐橋亮准教授は「韓国は米国の同盟ネットワークを政治的な理由で破壊した。そこに米国は相当憤っている。米国は韓国にメッセージを送るだろうが、韓国が是正するかは未知数だ」と指摘する。

 日米両国は“韓国の離反”を見据えた新たな安保体制の模索を迫られつつある。
(文・敷田寛明、下氏香菜子)

  

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