魅力はアナログ…だけじゃない!デジタル戦略で「チェキ」が目指す姿
富士フイルムのインスタントカメラ「インスタックス(チェキ)」は1998年の発売から約20年かけ、若者・女性から多くの支持を集めるヒット商品に成長した。フィルムやプリンターなどを合わせたシリーズ全体で、近年はヒットの勢いが加速。2019年は2年連続の年間販売台数1000万台の達成を目指す。ここでもカギはスマートフォンを使いながら、独自の体験を提供する製品群だ。
富士フイルムは6月に録音機能を備えた「インスタックスミニ リプレイ」を、10月にスマホ用プリンター「同リンク」を発売した。2製品は「新たなデジタル化へ1歩踏み出した製品」(イメージング事業管掌の宮崎剛執行役員)との位置付けだ。チェキは撮影するとすぐにフィルムにプリントでき、その場で手渡しできる。これによりスマホ全盛の中で女性やデジタル製品に慣れた若者の心をつかんできた。
リプレイは録音データを2次元コード「QRコード」化し、フィルムにプリント。スマホでQRコードを読み取れば写真とともに音声も楽しめる。カメラにはこれまでスマホとの接続機能はなかった。
リンクはスマホ用アプリケーション(応用ソフト)により、最大5台のスマホから画像を送り、1枚のフィルムにコラージュ(合成)してプリントできる。前機種ではスマホからプリントはできたが、複数接続はできなかった。
協業の可能性
フィルムへのプリントという最大の特徴は変わらないが、スマホとの連携により顧客層を開拓する。実際に、同リプレイは男性からの反響も多く、今秋には黒色を基調とした新デザインを追加する成果が出ている。
富士フイルムの新たな試みは、アプリやクラウド開発に携わる企業からも注目を集めており「協業の話は多く寄せられる」(宮崎執行役員)。チェキにおける他社との協業は、フィルムや本体デザインなどでは実績がある。高付加価値化に向けて、外部の技術も含めてどのような技術がチェキに取り込まれるのか注目だ。
楽しみ広がる
スマホアプリの活用拡大やカメラのネットワーク化は、チェキに近いターゲット層を狙うデジタルカメラの普及機が抱える課題でもある。第5世代通信(5G)の普及も見据えると「スマホとの接続性が高まることで、カメラの楽しみ方はさらに広がる」(飯田年久光学・電子映像事業部長)。スマホ全盛期に多くの人々の心を惹きつけるカメラとは何か、試行錯誤が続く。