大赤字のカメラ事業、オリンパスが撤退か存続かを決める判断基準

医療事業への貢献、長期的な企業価値につながるか

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豊富な交換レンズのラインアップにあわせカメラ本体の購入を促す

「オリンパスの企業価値を最大にする上で今日、映像事業は必要だ。しかし来年も必要かを今言うことはできない」とオリンパス社長の竹内康雄は警告する。「最終的な判断軸はそれが長期的な企業価値になるかどうかだ」。

映像事業の2019年3月期売上高は486億円で全体の6%。営業赤字は182億円(18年3月期は12億円の赤字)まで拡大しており、事業継続に厳しい視線が注がれる。それでも事業を続ける理由を「医療事業との関係だ」と映像事業担当役員の杉本繁実は語る。

杉本は「高精細な映像を生む技術と大量生産のノウハウという二つの軸で他事業に貢献できる」と説く。カメラや交換レンズは画像処理や光学など技術の開発サイクルが早く、オリンパスの技術の核であるイメージングのけん引役になる。映像事業で培った技術が医療分野の4K内視鏡システムなどに役立つ。

現在主力の内視鏡と異なり、今後注力していく治療器具は使い捨て製品を大量に生産する必要がある。欧米の競合と戦うため「カメラで培った生産のノウハウを使う」と執行役COOの田口晶弘は示唆する。

とはいえ事業単体の黒字化が重要課題であることに変わりはない。収益改善のカギを握るのは交換レンズだ。「レンズに必要なボディーを買ってもらえるビジネスが理想だ」と杉本は語る。

カメラ市場におけるオリンパスの強みは小さなセンサーサイズを生かしたシステムの小型・軽量化。三脚を使用せずに手持ちで撮影できる超望遠レンズは他社と差別化できる得意領域だ。交換レンズのラインアップで付加価値をつけやすく、商品のライフサイクルが長いことも利点とみる。

高い機動力が持ち味の「OM―D」シリーズや“カメラ女子”の火付け役にもなった「PEN」など同社のカメラは進化の途上にある。「オートフォーカス精度は追求に終わりがなく、よりよい作品作りという意味ではまだ改善の余地がある」(技術開発機能映像開発本部長・片岡摂哉)。カメラ市場の活性化に向けて挑戦は続く。(敬称略)

日刊工業新聞2019年12月19日

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ミラーレスだけ残し消去されてくデジカメ市場

カメラ市場の縮小ペースが速まっている。カメラ映像機器工業会(CIPA)の統計を見ると、2018年は前年同月比で1―2割程度減っていたカメラの出荷額が、19年は減少幅が同2―3割に広がった。カメラ大手のニコンやキヤノンは19年度の映像関連事業の見通しをいずれも下方修正しており、環境はより厳しさを増している。

まだ成長の可能性が残っているミラーレスカメラは、ほぼ前年並み。18年は35ミリメートルフルサイズに注目が集まったが、19年は普及機が多いAPS―Cサイズを中心

に新製品が相次いだ。中でも、動画撮影の機能や操作性を高めた製品が増加。若者を中心に会員制交流サイト(SNS)への動画投稿が増え、欧米やアジアでは動画版ブログ「ブイログ」の人気も拡大していることから、高品質な映像を手軽に撮れる製品が増えている。自撮りをしやすいチルト式の液晶パネルやスマートフォンのようなタッチ操作など、ターゲット層の利用方法に合わせた操作性の改良も見られた。

普及機はスマホのカメラ機能の向上に最も苦戦を強いられている領域だが、SNSの普及によって撮影に興味を持つ人が増える可能性も同時につかんでいる。市場縮小を止めるため、好機を最大限生かせる製品の登場に期待がかかる。動画への注目はフルサイズなど上位機種のミラーレスでも同様。19年秋には、パナソニックが映画制作を意識したモデルを投入した。4K・8K放送やサイネージ(電子看板)用の高品質なコンテンツ制作の増加、現場の省人化などを背景に、映像制作現場におけるミラーレスの活用拡大の可能性は高い。大容量の映像を高速で送れる第5世代通信(5G)への対応にも注目が集まる。

東京五輪・パラリンピックについては、従来通り一眼レフカメラが現場の多数派を占める見方が強い。キヤノンとニコンの大手2社も、一眼レフ最上位機種の開発を公表している。プロ層のミラーレス移行は、五輪後の2社の動向や各社のミラーレス専用レンズの本数次第と言えそうだ。

日刊工業新聞2019年12月20日

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