護衛艦の設計にAI導入、活動海域の拡大につながるか
コイル配置に応用、空いた時間を他の作業に
防衛装備庁は艦船設計の一部に人工知能(AI)を導入する。護衛艦の船体に装備する消磁コイルの艤装(ぎそう)設計は熟練技術者の判断で行ってきたが、遺伝的アルゴリズムの機械学習を組み込んだ消磁計算プログラムを作成して、熟練作業者が100回の検証で2―3週間かかっていたものを3―4時間に短縮できた。今後は消磁計算プログラムの結果を実艦のデータと比較し、精緻化を目指す。また、これまで使用してきた既存艦のデータをAIに学習させることでコイル配置位置検討のAI化も目指す方針だ。
護衛艦の設計では、機雷や航空用磁気探知機(MAD)などの脅威から守るため、船体にループ状の電線を巻いて、船体磁気を低減する。電線を船体のどこに何回巻くのかなどの配置設計がポイントになる。コイルに流す電流とコイル配置位置を最適化して船体磁気を減少、精度の高い艤装設計につなげる。
海賊対処活動や同盟国との共同訓練などで海上自衛隊の護衛艦の活動海域が拡大し、船体磁気低減の重要性が増している。熟練工の作業をAI化することで、設計の高精度化のほか、浮いた時間を他の作業へ振り向けることが可能になる。
日刊工業新聞2019年11月26日