新型護衛艦の2番札で歓喜、「君が代」に心震えた造船所

三井造船、官公庁船シフトで多能工化を進める

 2016年10月17日―。三井造船常務執行役員で船舶・艦艇事業本部長の古賀哲郎は、この日を万感の思いで迎えた。玉野事業所(岡山県玉野市)で00年以来の建造となる潜水艦救難艦「ちよだ」の進水式。古賀は「君が代を聴いたとき心が震えた。この仕事を絶やしてはいけない」と、造船事業の継続を心に誓った。

 艦艇や商船の建造を担う玉野事業所は、転換期の渦中にある。新造船需要の低迷で商船事業が厳しい中、市況に左右されにくい官公庁船の受注に軸足を移しつつある。

 ただ、商船と官公庁船では、建造に必要な技能が異なる。商船は船体の外郭である船殻が建造工程で大きなウエートを占めるが、官公庁船は設備や配管などを設置する艤装(ぎそう)が肝となる。

 執行役員で玉野艦船工場長の三宅俊良は「船殻中心の現体制ではバランスが合わない」と指摘。船殻の作業者が艤装も行えるよう多能工化を進めている。16年から1年間、船殻担当70人を艤装へ一時的にシフトして実地で技能を学ばせた。

 三宅は「多能工化で人材の流動性が高まると、工場運営が非常にしやすくなる」とメリットを実感する。17年度は逆に艤装の人員を船殻に行かせ、一層の多能工化を志向する。

 これまでは一定規模の受注が見込める商船をベースに、山谷のある官公庁船を手がけてきた。三宅は「官公庁船がメーンになる時期も、多能工化で建造効率を高めれば対応できる」と自信をみせる。

 8月、玉野艦船工場は歓喜に沸いた。防衛装備庁が18年度以降に計画する新型護衛艦の入札で2番札を引いた。受注が確定すれば1番札の三菱重工業が6隻、三井造船が2隻を建造する予定。14年に引き渡した「ふゆづき」以来の護衛艦となり、三宅は「なんとしても受注したい」と期待を込める。

 今後も「音響測定艦や海洋調査艦といった玉野が得意とする補助艦の案件が出てくる」と三宅。ライバルも官公庁船に熱視線を送る中、三井造船の底力が試される。

長塚 崇寛

長塚 崇寛
10月29日
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1917年、三井物産の造船部として産声を上げた三井造船。以来100年間、造船関連事業を軸に幾多の荒波を乗り越えてきたが、その祖業が苦境に立たされている。船舶・艦艇事業本部長の古賀哲郎常務執行役員は「我々も造船の旗は降ろさない。一つの軸として生き残りたい」と強調。「現場には厳しいが、『あと2、3年は耐えろ』と伝えている」と話す。新造船需要の低迷や韓国・中国勢の安値受注に伴う低船価の状況が続き、総合重工各社の造船部門は、構造改革のまっただ中だ。三菱重工業は専業大手3社との業務提携を決断、川崎重工業は国内事業規模の3割縮小を進めている。

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