「いずも」空母化で、日本が新たに手に入れる力

 垂直離着陸できる戦闘機を搭載する計画で、海上自衛隊最大の護衛艦「いずも」型に内外の関心が高まっている。2019年度に始まる新防衛大綱は、同艦に短距離離陸・垂直着陸(STOVL)機を搭載するための調査研究を明記。仮に搭載されれば、いずも型の汎用性がさらに高まり、南西諸島方面を中心に防衛力の拡大効果が期待できる。海洋覇権国家を目指す中国が「遼寧」に続く本格空母を数年以内に相次いで就役させる計画もあり、アジア太平洋の平和バランスを保つためにもいずも型の活用が望まれる。

南西諸島など防衛力拡大


 いずも型護衛艦の現在の搭載能力は対潜哨戒ヘリコプター7機、汎用ヘリ2機。単に積むだけなら実際はさらに多数を搭載できる。最大の特徴は全通型の飛行甲板および格納庫。艦橋や煙突など途中を遮るものがないため、複数機を同時に離着艦させるなど、ヘリを広々と運用できる。全長は旧日本海軍の空母「加賀」とほぼ同等の248メートル、幅38メートル。飛行甲板の長さも245メートルある。速力は30ノットで、他の一般護衛艦と統一した艦隊行動が可能だ。

 広々とした搭載能力を生かし、大地震など災害時に、物資や人員の輸送、医療などで活躍した実績がある。熊本地震の際は北海道の小樽から福岡・博多間に2日間で、陸上自衛隊の隊員や物資などを運んだ。仮にこれを陸自のトラックや輸送車両で一般道路を使って運ぶとなると、優に4日以上かかるという。また、24時間走り続けるためドライバーをその都度、交代させなければならない。

 医療では手術室や集中治療室、エックス線室などの設備を備え、超音波エコーや遠隔医療システム利用も可能だという。長期間の航海時はもちろん、災害時には自治体との連携で効果を発揮する。

飛行場の少なさカバー


 南西諸島エリアを防衛する場合、わが国の弱点は飛行場の数がきわめて限られている点だ。最初に飛行場がミサイルなどで攻撃された場合、戦闘機の発着などは不可能になる。攻撃側はその間に一気呵成に侵攻し、島の占領などで“既成事実化”する戦法が考えられる。「遼寧」の戦闘機搭載が約40機あるのに対し、いずも型の搭載能力は10機程度と見られるが、九州などその他の飛行場の戦闘機、さらに米軍の戦闘機などがいずもに緊急着艦し、補給基地や前線基地として使えるようになれば話は違ってくる。陸上固定型の飛行場と違い、艦の利点は自由に好きな場所に動ける点だ。いずもに航空機搭載能力が備われば攻撃側はこの備えに兵力を振り向けねばならず、侵攻能力がその分、減殺される。

 現代の戦争は宣戦布告後にミサイル攻撃や空襲をかけるスタイルばかりとは限らない。漁民を装い島に上陸させ、国際連合や外国の非難決議効力が生じないうちに既成事実をどんどんつくり、固定化させる。そうした事態を防ぐのに必要なのは短時間で現場に急行、兵力を展開できる能力であり、いずも型の改修はこの点で有効だ。航空自衛隊との運用のすり合わせや飛行甲板補強、弾薬庫の改造問題もあるが、運用方法が増すことは攻撃側にとって厄介になる。
(文・嶋田歩)

日刊工業新聞2019年3月15日

  

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