「G-SHOCK」を作った男の頭の中とアイデア発想の極意

連載・発想のスイッチの入れ方 #01/カシオ計算機・伊部菊雄

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G-SHOCKの生みの親

既成概念に縛られない

 G-SHOCKの生みの親である伊部さんにはアイデア発想法について教えを請う声が相次ぐ。そこで話ができるように10年以上前に自身の発想法を整理したという。そこにはG-SHOCK開発の経験が当然、色濃く反映されている。

 ―伊部さんのアイデア発想法を教えてください。
 二つあります。一つは常に頭の片隅に(アイデアが求められる課題を)置いておくこと。私の持論は「アイデアが出るか否かは能力ではなく考えた時間に比例する」です。アイデアが出ないのは考えた時間が少ないからです。もちろん少ない時間で出る人とたくさん考えないと出ない人はいます。私は後者なので頭の中において無意識にも気になっているという時間が必要です。もうひとつは特別な方法ですが「10文字25文字法」です。

 ―どんな方法ですか。
 最初に自分のいる業界で通じる10文字を考えます。ガラス業界であれば「強くて割れない」、運送は「早くて丁寧」などです。11文字12文字は決して駄目ではありませんが、10文字以内で表現できたものはいつの時代も通じる普遍的なテーマになる可能性がある。その上で自社のコア技術などを生かした開発課題を前に置きます。例えば「『透明セラミック処理で』強くて割れない」や「『新瞬間冷凍で』早くて丁寧」など。経験上、これが25文字以内で表現できるといいテーマになる可能性があります。もし行き詰まったら最初の10文字(を設定し直すということ)に立ち返ります。

「10文字25文字法」の説明資料 
 
―この方法はどのように生まれたのですか。
 (きっかけは)「丈夫で壊れない」です。G-SHOCK(の本質)とは何かについて考えたときにたまたま10文字だと考えて他の業界でも検証し、10文字以内は普遍的なテーマになると気付きました。それが決まればあとは開発課題を考えるだけでいいということにたどり着きました。簡単な方法ではないかもしれませんが(一般のビジネスパーソンも)やってみる価値はあると思います。

 ―その難しい方法をビジネスパーソンが使う場合に意識すべきことはありますか。
 既成概念に縛られないことです。例えば運送の「早くて丁寧」は当たり前ですが、そう思った瞬間に駄目。それを原点だと思えるかどうかが大事です。(アイデアを発想する際に大事なことについて)伝えるのは難しいですが、とにかく常識にとらわれないこと。例えば(一般の)はさみは3本の指を使いますが、「なぜ3本なのか」と思った途端に出てくるアイデアが変わってくる。「これはこういうもの」という考えは一回白紙に戻すことが大事だと思います。

【略歴】1952年生まれ。1976年上智大学理工学部機械工学科卒、カシオ計算機入社。設計部に所属し、デジタル時計の構造開発を担当。1981年に「落としても壊れない時計」というテーマを掲げ、耐衝撃構造の開発をスタート。2年を費やし「G-SHOCK」として商品化に至る。その後、外装素材にメタルを用いたG-SHOCK「MR-G」など、さまざまな商品の商品企画などに従事。現在も時計の開発を行いながら、「Father Of G-SHOCK」として世界各国で行われているG-SHOCKのイベントに参加し、ブランドの世界観を広める活動を行っている。また、小学生から大学院生までに、ものづくりの苦しさとその先にある楽しさを出前授業として伝えている。

連載・発想のスイッチの入れ方

#01 G-SHOCK・伊部菊雄(11月18日公開)
 #02 ぷよぷよ・米光一成(11月21日公開)
 #03 ∞プチプチ・高橋晋平(11月25日公開)
 #外 博報堂のアイデア発想AI(11月28日公開)
 #04 空調服・市ヶ谷弘司(12月2日公開)
 #05 ガリガリ君・鈴木政次(12月5日公開)

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COMMENT

葭本隆太
デジタルメディア局DX編集部
ニュースイッチ編集長

社内では企画に対する助言や人材育成などに取り組んでいる伊部さんですが、他人のアイデアには目を見張ることが多いと言います。最近気になったアイデアとして教えていただいたのは、シャボン玉を作る道具。インタビュー日前日におじいちゃんと小さなお孫さんが公園で遊んでいる様子を見たそうです。取っ手のついた大きな輪っかのようなものに石けんをつけて、それを持ちながら走ったり、振ったりして作るタイプのものに感心したそうです。「おそらく(旧来の)吹いてシャボン玉を作る道具では、(吹くという動作が難しいため)シャボン玉が作れないくらい小さな子だったので、そんな子でもシャボン玉で遊べるようにした素晴らしいアイデア」とおっしゃっていて、私なんかはそんな考察ができる伊部さんに凄さを感じてしまいました。

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