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トヨタが部品会社向けの鋼材価格、2年半ぶり値上げへ

鉄鉱石上昇を背景に3000円程度。今後の相場に大きな影響
トヨタが部品会社向けの鋼材価格、2年半ぶり値上げへ

トヨタの支給材は半年ごとに見直される(同社生産工場)

 トヨタ自動車は、系列部品メーカーに対し2019年度下期(19年10月―20年3月)に供給する自動車用鋼材(支給材)価格を、上期(4―9月)に比べてトン当たり3000円程度引き上げる方針を固めた。近く系列部品メーカーなどに通知する。値上げは17年度上期以来2年半ぶり。同社の支給材は、取引量の多さから国内鋼材価格の指標で今後の相場に大きく影響する。トヨタの支給材は、半年ごとに見直される。

トヨタ自動車が2年半ぶりに引き上げる2019年度下期(19年10月−20年3月)の支給材(用語参照)価格は、トヨタと鉄鋼大手との交渉で決まる上期(4―9月)の鋼材集購価格(ひも付き価格)を基準とする。価格は非公表で、通常は鉄鉱石や原料炭価格、為替などの変動を参考に決まる。すでに決まったトヨタと日本製鉄など大手鉄鋼各社による19年度上期の鋼板価格(ひも付き価格)交渉も、トヨタによる支給材価格の引き上げと同程度になったもようだ。


 国内鉄鋼メーカーが資源大手から調達する鉄鉱石価格(本船渡し)は、7―9月期が4―6月期比21%高の1トン当たり約86ドル、原料炭価格(本船渡し)は4―6月期が1―3月期比1%安の同約208ドルだった。

 鉄鉱石の高騰は、ブラジルで1月に発生した世界最大手ヴァーレの鉱山ダム決壊事故や中国の鉄鋼増産により鉄鉱石価格の上昇が続いたため。ただ現在は、鉄鉱石と原料炭のスポット価格は下落している。為替も1ドル=106円前後と、支給材価格の見直しを行った前回(2月)より5円程円高が進んでいる。

 日本製鉄は原料価格の他に物流費、副資材などのコストが上昇しており大幅な値上げをトヨタに求めたが、鋼材需要の低迷により市中在庫が高水準で積み上がっている。そのため、今回の値上げは鉄鉱石価格の上昇分を反映する形で決着した。

 トヨタの支給材価格は17年度下期に4000円下げて以降、据え置きが続いていた。

【用語=支給材】
自動車メーカーが鉄鋼メーカーから一括大量購入することで安く仕入れ、系列部品メーカーなどに卸す鋼材。メーカーは部品コストを把握できるメリットがある。店売り価格の変動要因にもなる。トヨタでは集購材とも言う。
                 
日刊工業新聞2019年8月21日

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