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「1台の開発費は今までの倍」 電動車販売が自動車メーカーの収益圧迫

「コストの上乗せ分のすべてを商品価格に反映するのは難しい」
「1台の開発費は今までの倍」 電動車販売が自動車メーカーの収益圧迫

CASE対応の開発費が増やす大手(左からホンダの八郷社長、トヨタの豊田社長、日産の西川社長)

 乗用車メーカー7社の2020年3月期連結決算は、円高や研究開発費増が逆風となる。またガソリン車よりコスト高である電動車の販売増が収益を押し下げるケースも目立ってきた。CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)対応に十分な研究開発投資を継続するには収益力の強化が欠かせない。過度な値引きをしない販売の質向上とともに、原価低減など地道な取り組みの重要度も増している。

 20年3月期の7社の想定為替レートは三菱自動車が19年3月期実績比2円円高の1ドル=109円、残りの6社は同1円円高の110円に設定した。

 トヨタ自動車は全体の為替影響が営業損益で1700億円の悪化要因になる見込み。新興国通貨安も懸念材料でスズキはインドルピー安が26億円の減益要因になるとみている。

 またCASE対応のための研究開発費の増加が各社の利益を圧迫する。CASE時代には自動車のプラットフォーム(車台)を基本部分から作り替える必要があり、「1台の開発費は今までの倍ぐらいになる」と三菱自の益子修会長は説明する。

 トヨタの研究開発費は過去最高の1兆1000億円(前期比4・9%増)を計画。CASEなど先進分野は「今は4割程度だが、中期的に5割を充てる」(小林耕士副社長)とした。日産自動車はリストラモードを鮮明にしたが、「新商品とCASE関連投資は増加させる」(西川広人社長)とし前期比5・1%増の5500億円を計画する。

 一方、電動車の販売増が収益性低下につながる構造が浮き彫りになってきた。スバルはハイブリッド車(HV)の好調が、19年3月期の営業損益の減益要因になった。

 エンジンに加えモーター、インバーター、電池を積み車両コストが高い一方で、「(ガソリン車と比べた)コストの上乗せ分のすべてを商品価格に反映するのは難しい」(岡田稔明最高財務責任者〈CFO〉)のが実情で利幅が小さい。部材のコスト低減と合わせて、「どのようにして顧客に電動車の価格価値を認めてもらうかは業界共通課題」(同)と指摘した。

 逆風も多い中で、各社は原価低減に力を入れる。ホンダは関連の取り組みで1520億円の営業損益の押し上げを狙う。1000億円超えは2年連続だ。1100億円の増益効果を目指すトヨタは「サプライヤーと一緒に競争力を高める」(白柳正義執行役員)と強調した。
                   

                  
日刊工業新聞2019年5月17日

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