スバル新型車が映す、車載ディスプレーの近未来

走りだけでなく車内の快適性を追求、素材メーカーが新技術で後押し

 SUBARU(スバル)は秋発売予定の「アウトバック」(米国仕様)で、エアコンやオーディオの操作パネルをなくして大画面に統合しつつ、画面が悪目立ちしないデザインにこだわった。

 高級車だけでなく、アウトバックのような走り重視の車も、軽自動車も、快適性を高める方向へ進む。スバルは走り重視のイメージだが、「顧客の間口が広がり、所有する喜びに応える質感はますます重要になっている」(スバル広報)。より本物感のある内装を実現するため、素材メーカーとの協業や素材の選択肢も増えているという。

 こうした新車の動きを受け、富士経済(東京都中央区)は車載ディスプレーの市場規模が2022年に17年比68.0%増加すると予想。矢野経済研究所(同中野区)は、パウダースラッシュコンパウンドについて、レザーに類似した質感と成形性の高さが評価されて中高級車用インスツルメントパネル向け素材の代表格になっているとの調査結果をまとめている。

 多様な情報を表示する自動運転車にも大型ディスプレーは欠かせない。液晶パネル主要部材である偏光板フィルム大手の住友化学は、車載分野の強化を狙い、同業のサンリッツ(富山県入善町)をグループ会社化した。要求される特性の高い車載分野は収益性も良く、多くのパネル部材メーカーが市場を狙う。

 衝突事故時のガラス飛散防止のために2枚合わせガラスの間に挟む「中間膜」は、ディスプレーとして存在感を高めている。積水化学工業は断面をくさび形に成形することで光の屈折を制御し、映像を鮮明に映し出せる中間膜を生産する。

 現在、速度情報などをフロントガラス上の一部に表示する用途に展開。さらなる大画面化ニーズをにらみ、フロントガラス全体を表示画面にする自発光中間膜も開発中だ。中国・上海に中間膜の研究センターを新設、オランダでラインを増設し、事業を拡大する。

 大量の情報の送受信には第5世代(5G)通信の実用化が期待される。AGCは車内に安定した5G通信環境を実現するため、透明アンテナとガラスが一体となった「ガラス型アンテナ」を開発した。

 5G通信向けの28ギガヘルツ帯周波数は直進性が強く、車室内で電波が弱まる傾向があった。弱まる前に同アンテナで電波を送受信すれば、この問題が起きない。透明のため、外観を損ねないのも利点だ。

 日本板硝子は、新しい空間演出を実現する“光る窓ガラス”を開発した。有機発光ダイオードを組み合わせたガラスで、製造工程で熱分解を活用し、ガラス表面に透明導電膜を成膜。基盤とふたに導電膜コーティングしたガラスを使い、板ガラス自体が照明として機能する。ガラスの可能性が広がりそうだ。
日本板硝子が開発した“光る窓ガラス”

 

日刊工業新聞2019年8月15日の記事から抜粋

  

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