「マツダ3」には2重壁構造、クルマの静音・吸音が進化し続ける黒子役

素材各社、ニーズ知る強み活用

 目的地へ移動するためだけの乗り物なら、車は“愛”車とは呼ばれなかっただろう。CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)の方向へ進化しても、車がプライベート空間であることは変わらない。自動運転が普及すれば、人は運転操作から解放され、一層、居住空間としての快適さが重視される。

 車内空間の快適性を高める動きは、自動運転の普及を待たず、すでに現行車で広がっている。マツダは5月に発売した主力製品「マツダ3」に、NVH性能と呼ばれる騒音・振動・ハーシュネス(ガタピシ感)を抑える複数の技術を導入した。吸音性能を高めるため初採用した「2重壁」構造は、建築業界でも研究されている。

 それを支える素材業界。「より快適に、健康に過ごせる。住宅と車に求められる要素は近づくはずだと、旭化成の田村敏常務執行役員は語る。同社は住宅事業で居住者のニーズを知る強みを、今後、自動車向けビジネスにも生かしていく。

 同社の車室空間コンセプト「AKXY POD(アクシーポッド)」は、“車はこうあるべき”という固定概念を外し、心地よさを追求した。完成車メーカーが実用化を求める木材を印象的に配置。シートに使った人工皮革「ラムース」は高級感のある手触りから需要が拡大しており、このほど増産を決めた。

 より上質な内装材へのニーズの高まりを受け、東レはスエード調人工皮革「ウルトラスエード」を自動車内装などの用途で展開。超極細繊維の不織布構造体を用い、上質な風合いや手触り、通気性などを訴求する。豊富な色展開で好みにきめ細かく対応できる。

 帝人は内装の静粛性や高級感へのニーズに対応するため、自動車内装向けに多層の不織布を展開している。吸音性を高めるとともに、シワを防止し、シートの高級感を維持する。

 車内空間はどんどん静かになる傾向があり、静音材や吸音材の商機が拡大している。三菱ケミカルは一般的な吸音材繊維の10分の1以下の細さの超極細繊維「XAI(サイ)」を吸音材に提案する。高価な素材だが、従来素材のフェルトなどと混ぜてコスト上昇を抑えつつ、従来素材に比べて軽量化する使い方もできる。

 東レもナノファイバー不織布を吸音材として展開している。三井化学は紙おむつ向けに培った不織布技術を吸音材などに生かす。

 広い車室空間は構造部材の進化が不可欠だ。車体構造は衝突事故時に壊れる“クラッシャブルゾーン”を想定し、居室側を守るように設計している。この部分に引っ張り強度が高いハイテン(高張力鋼板)や、さらに同強度の高い超ハイテンを採用すれば、部品が破断しにくくなり、同部分を小さくしても大きなエネルギーを吸収できる。「乗車スペースを広くでき、快適性が高まる」(鉄鋼大手技術部門幹部)という。

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人工皮革「ラムース」の需要が拡大している(旭化成)

 

日刊工業新聞2019年8月15日付記事から抜粋

  

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