4ー6月は大減益も、日産が通期業績を据え置いたワケ
販売減は織り込み済み、「19年度内に挽回できる」
日産自動車は25日、2018年度から22年度までの5年間で全従業員の10%に相当する1万2500人を削減すると発表した。主に海外工場を対象に計14の生産ラインを縮小する。閉鎖も視野に入れる。同日発表した19年4―6月期連結決算の営業利益は、主力の米国販売の不振も響き前年同期比98・5%減の16億円に落ち込んだ。
人員削減などによる事業効率化と、米国事業の収益改善を同時並行で進める。今期を業績の底にし、22年度に成長軌道に戻す計画。
日産が取り組む生産ラインの効率化は、18―19年度では福岡県、栃木県の工場を含む八つが対象で計6400人を削減。さらに22年度までに6ラインを対象に追加し計6100人を削減する。
これにより22年度のグローバル年産能力は18年度比約10%減の660万台を計画する。西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)は「非常に健全な水準になる」と説明した。また商品展開では小型車、新興国向けブランド「ダットサン」を中心に22年度までに車種を10%削減する。
4―6月の米国販売は前年同期比3・7%減。インセンティブ(販売奨励金)抑制など販売の正常化に取り組んでおり、販売減は織り込み済みだった。4―6月は「落ち込みが想定を少し超えた」(西川社長)が、「19年度内に挽回できる」とした。
日産自動車の業績悪化が深刻化している。25日に発表した2019年4―6月期連結決算の営業利益は前年同期比99%減に沈んだ。米国事業の不振や原材料価格の上昇、為替変動などが利益を押し下げた。ただ日産は足元の業績悪化を22年度の復活に向けた必要な“痛み”と捉え、米国を中心とした事業効率化と成長戦略を着実に進める考えだ。
日産の19年4―6月期連結決算の売上高は同12・7%減の2兆3724億円、当期利益は同94・5%減の63億円だった。世界販売台数は同6・0%減の123万1000台に落ち込んだ。中国は市場全体が減少する中で伸長したものの、米国や欧州、日本で前年同期比を下回った。
ただ会見した日産の西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)は冷静に、「第1四半期は今期で一番厳しいと想定していた」と話し、業績予想は据え置いた。
5月に公表した業績回復に向けた「リカバリープラン」が、ほぼ想定通りに進んでいるからだ。同プランでは22年度に営業利益で19年度見込み比4800億円増の8700億円を目指す。上積み分の内訳は事業効率化で3000億円、事業成長で1800億円。
事業効率化では海外工場をメーンとした生産ラインの縮小が柱になる。20年度から22年度に実施する拠点は明らかにしていないが、西川社長は「(前回の中期経営計画)『パワー88』で投資した(新興国向けブランド)『ダットサン』、小型車が対象になる」と方向性を示した。
事業成長では米国での販売回復が柱。これまで日産はインセンティブ(販売奨励金)を手厚くしたり、大口顧客(フリート)向けを伸ばしたりして、無理に販売を拡大してきた。この戦略を転換し、一般消費者向けのリテールを増やせるかが最大のポイントだ。
主力の20モデルを全面改良し、車齢をトヨタ自動車やホンダより高い今の5年から3・5年に引き下げる。新モデルには強みとする電動車や自動運転技術を盛り込んでブランド力を上げ、高く売れるようにする。西川社長は22年度に向け「今よりリテールを10万台増やせればブランド力が回復したと言える」と説明した。
ただ行方は楽観視できない。自動車業界では「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)」という新たな潮流が台頭しており、自動車メーカー各社は対応を迫られている。
日産も、研究開発費は22年度までに10%増やす。計画のブレを許容するバッファーは少ないとみられ、米国市場の全体需要が大幅縮小すれば、リカバリープランは頓挫しかねない。
人員削減などによる事業効率化と、米国事業の収益改善を同時並行で進める。今期を業績の底にし、22年度に成長軌道に戻す計画。
日産が取り組む生産ラインの効率化は、18―19年度では福岡県、栃木県の工場を含む八つが対象で計6400人を削減。さらに22年度までに6ラインを対象に追加し計6100人を削減する。
これにより22年度のグローバル年産能力は18年度比約10%減の660万台を計画する。西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)は「非常に健全な水準になる」と説明した。また商品展開では小型車、新興国向けブランド「ダットサン」を中心に22年度までに車種を10%削減する。
4―6月の米国販売は前年同期比3・7%減。インセンティブ(販売奨励金)抑制など販売の正常化に取り組んでおり、販売減は織り込み済みだった。4―6月は「落ち込みが想定を少し超えた」(西川社長)が、「19年度内に挽回できる」とした。
「リカバリープラン」ほぼ想定通り
日産自動車の業績悪化が深刻化している。25日に発表した2019年4―6月期連結決算の営業利益は前年同期比99%減に沈んだ。米国事業の不振や原材料価格の上昇、為替変動などが利益を押し下げた。ただ日産は足元の業績悪化を22年度の復活に向けた必要な“痛み”と捉え、米国を中心とした事業効率化と成長戦略を着実に進める考えだ。
日産の19年4―6月期連結決算の売上高は同12・7%減の2兆3724億円、当期利益は同94・5%減の63億円だった。世界販売台数は同6・0%減の123万1000台に落ち込んだ。中国は市場全体が減少する中で伸長したものの、米国や欧州、日本で前年同期比を下回った。
ただ会見した日産の西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)は冷静に、「第1四半期は今期で一番厳しいと想定していた」と話し、業績予想は据え置いた。
5月に公表した業績回復に向けた「リカバリープラン」が、ほぼ想定通りに進んでいるからだ。同プランでは22年度に営業利益で19年度見込み比4800億円増の8700億円を目指す。上積み分の内訳は事業効率化で3000億円、事業成長で1800億円。
事業効率化では海外工場をメーンとした生産ラインの縮小が柱になる。20年度から22年度に実施する拠点は明らかにしていないが、西川社長は「(前回の中期経営計画)『パワー88』で投資した(新興国向けブランド)『ダットサン』、小型車が対象になる」と方向性を示した。
事業成長では米国での販売回復が柱。これまで日産はインセンティブ(販売奨励金)を手厚くしたり、大口顧客(フリート)向けを伸ばしたりして、無理に販売を拡大してきた。この戦略を転換し、一般消費者向けのリテールを増やせるかが最大のポイントだ。
主力の20モデルを全面改良し、車齢をトヨタ自動車やホンダより高い今の5年から3・5年に引き下げる。新モデルには強みとする電動車や自動運転技術を盛り込んでブランド力を上げ、高く売れるようにする。西川社長は22年度に向け「今よりリテールを10万台増やせればブランド力が回復したと言える」と説明した。
ただ行方は楽観視できない。自動車業界では「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)」という新たな潮流が台頭しており、自動車メーカー各社は対応を迫られている。
日産も、研究開発費は22年度までに10%増やす。計画のブレを許容するバッファーは少ないとみられ、米国市場の全体需要が大幅縮小すれば、リカバリープランは頓挫しかねない。
日刊工業新聞2019年7月26日