ニュースイッチ

輸入車は売れてるけど、「モーターショー」不参加相次ぐ本当の理由

「費用対効果」独自プロモーションで十分、展示会のあり方問う
輸入車は売れてるけど、「モーターショー」不参加相次ぐ本当の理由

VWとアウディは出展見送り(前回17年開催の東京モーターショー)

日本自動車輸入組合(JAIA)の上野金太郎理事長(メルセデス・ベンツ日本社長)は2019年の外国メーカーの輸入販売台数について「一時的に本国からの車両の供給遅れがあったが今後は堅調に推移し、30万台達成の可能性は高い」と3年連続で大台を超える見通しを示した。一方で、独フォルクスワーゲン(VW)など輸入車メーカーが、今秋開催の「東京モーターショー」の出展を相次いで見送っている。海外勢の日本戦略はどう変化していくのか。

 10月に予定される消費増税を含めた下期(7―12月)の販売について上野理事長は「政府による自動車税の恒久減税や需要平準化対策などが始まる。過去のような駆け込みの反動減が繰り返されないことを期待する」とした上で、「各社が残価設定ローンや低金利によるファイナンスプランを積極的に出していく」と述べ下期の販売増を狙う姿勢を示す。

 人工知能(AI)による音声対話や、スマートフォンによるアンロック操作、リモート駐車、後退時衝突警告機能などの先進技術を搭載した新車が下期の販売に寄与する見通し。

 19年上期(1―6月)の販売数は、前年同期比1・8%減の14万9010台で10年ぶりに前年同期実績を下回ったが、統計開始以降で過去5番目に高い水準だった。上野理事長は「先進安全技術を備えた新車のほか、ハイブリッド車(HV)やクリーンディーゼル車といった多様なパワートレーン(駆動装置)構成、スポーツ多目的車(SUV)やクロスオーバー車が好調だった」と振り返える。

 一方、「東京モーターショー」の相次ぐ出展見送りは、費用対効果や新車発表のタイミングなどが理由だが、モーターショーに頼らない独自のプロモーションに力点を移し、顧客との新たな接点づくりを模索しているから。JAI)の上野理事長は「モーターショーのあり方が世界的に見直されている」と指摘する。

 VWはリーマン・ショック後の2009年開催以来の東京モーターショーの出展見送りとなる。VWグループのアウディも参加しない方針だ。フォルクスワーゲングループジャパン(愛知県豊橋市)のティル・シェア社長は「前回は四つの新型車を発表できたが、今回紹介できる新商品がまだない」と商品ラインアップを不参加の理由に挙げる。

 ただブランドの露出を増やす独自の取り組みを強化しており、ウェブや会員制交流サイト(SNS)などデジタルを活用したプロモーションのほか、人気の「ワーゲン・バス」をさまざまなイベントに無償で貸し出すなどして訴求の手を緩めない。

 スウェーデンのボルボ・カーズも出展を見送った。欧州、北米、中国で開催するモーターショー以外に出展しないことを14年に表明しており、東京モーターショーは13年開催を最後に正式出展はしていない。今後も東京開催以外のモーターショーを含め出展を継続していくかは未定。費用対効果は低いと見て訴求手段を別の方法に切り替える方針だ。

 BMWも参加を見送る方向だが出展を継続するメーカーもある。仏ルノーは出展。日本法人ルノー・ジャポン(横浜市西区)は国内に約70店の店舗網を構えるが、ほかの輸入車と比べ規模は小さい。このため「車を見るという目的を持った数十万人の来場者にルノーの車を見てもらえる」(広報)とモーターショーを好機ととらえる。

 国内輸入車販売トップのメルセデス・ベンツも出展を決めた。車を売らないショールームの展開などモーターショー以外のプロモーションにも力を入れるが、引き続き東京モーターショーはコンセプトモデルや新車発表が効果的にできる場として重視する姿勢だ。

 JAIAの上野理事長は「独のフランクフルトモーターショーに国産メーカーが出展していないのは新しいことではない。出展料の世界的な高騰は参加の阻害要因になっていくのではないか」とも指摘する。

 日本市場の先細り傾向を映すように来場数も伸び悩んでいる。東京モーターショーの勢いの衰えはかねてより指摘されていたが、デジタル化など訴求手段の多様化が市場動向とは別の潮流としてモーターショーのあり方に影響を与えているようだ。
日刊工業新聞2019年7月18日の記事を加筆・修正

編集部のおすすめ