好調マツダ、実は落とし穴が数多い
スカイアクティブのプレミアムに対し、販売改革が追いつかず
マツダの好調が目立つ。「ロードスター」が世界カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したのが象徴的だが、商品と技術、業績の面からもこれまでにない高い評価と実績を得て自信を取り戻したようだ。2012年3月期まで4年連続で当期赤字を計上し、09年と12年の2度にわたって資本増強に追い込まれた経営危機から復活した。その要因を探ることは、他の業界でも参考になるだろう。
マツダ復活のカギとなったのは、なによりも”商品の良さ“だ。「スカイアクティブ」と呼ぶ新世代自動車技術、とりわけディーゼルエンジンとデザインが高い評価を受けた。スカイアクティブ車は高い採算性を併せ持っており、16年3月期まで3期連続で営業利益過去最高を更新する高収益を支えている。
今の同社には二つの特徴がある。第一に、他社と同じことはしないという独自性へのこだわり。第二に、年間150万台という自らの規模を自覚した上での思い切った選択と集中だ。
技術面では、各社がハイブリッドなどの電動化へシフトしていた時代に背を向けるかのように内燃機関の性能向上に集中した。その結果、ディーゼルエンジンでは国内で唯一、路上の実走行試験においても窒素酸化物(NOx)の規制値を下回る高い環境性能を実現した。
商品展開する領域も自社の規模に見合ったものに限定。徹底的に知恵を絞って部品共用化や開発手法の効率化などを進め、短期間に多くの車種を投入することに成功した。これらを実現できた背後には、おそらく適切な人材配置とマネジメントの頑固さがあったろう。
だが、この復活が本物かどうかを判断するのは、これからである。今後しばらく新型車が出ない時期を迎える。加えて国内販売は昨年10月から前年比減に転じ、息切れとも見える。後輪駆動車の復活やロータリーエンジン搭載車の試作など「プレミアムブランド」への舵(かじ)の切り方が性急すぎる懸念もある。環境規制の大幅強化が見込まれる中で、マツダのような中位自動車会社に残された余裕は小さい。
エンジンの過給小排気量化(ダウンサイジング)に向かった提携先の米フォードと袂を分かち、エンジンの効率改善因子を極め、エンジンそのものをゼロベースで作り直すという当社の戦略が、スカイアクティブ技術で大成した。長期的な世界の流れを先読みし、時流に流されず理詰めで行動する。こういった、ぶれないマツダの骨太なクルマ作りが、現在の高評価なクルマを生み出してきた。この成功を再現し持続させることが今後の課題だ。
<続きはコメント欄で>
マツダ復活のカギとなったのは、なによりも”商品の良さ“だ。「スカイアクティブ」と呼ぶ新世代自動車技術、とりわけディーゼルエンジンとデザインが高い評価を受けた。スカイアクティブ車は高い採算性を併せ持っており、16年3月期まで3期連続で営業利益過去最高を更新する高収益を支えている。
今の同社には二つの特徴がある。第一に、他社と同じことはしないという独自性へのこだわり。第二に、年間150万台という自らの規模を自覚した上での思い切った選択と集中だ。
技術面では、各社がハイブリッドなどの電動化へシフトしていた時代に背を向けるかのように内燃機関の性能向上に集中した。その結果、ディーゼルエンジンでは国内で唯一、路上の実走行試験においても窒素酸化物(NOx)の規制値を下回る高い環境性能を実現した。
商品展開する領域も自社の規模に見合ったものに限定。徹底的に知恵を絞って部品共用化や開発手法の効率化などを進め、短期間に多くの車種を投入することに成功した。これらを実現できた背後には、おそらく適切な人材配置とマネジメントの頑固さがあったろう。
だが、この復活が本物かどうかを判断するのは、これからである。今後しばらく新型車が出ない時期を迎える。加えて国内販売は昨年10月から前年比減に転じ、息切れとも見える。後輪駆動車の復活やロータリーエンジン搭載車の試作など「プレミアムブランド」への舵(かじ)の切り方が性急すぎる懸念もある。環境規制の大幅強化が見込まれる中で、マツダのような中位自動車会社に残された余裕は小さい。
ファシリテーター・中西孝樹氏の見方
エンジンの過給小排気量化(ダウンサイジング)に向かった提携先の米フォードと袂を分かち、エンジンの効率改善因子を極め、エンジンそのものをゼロベースで作り直すという当社の戦略が、スカイアクティブ技術で大成した。長期的な世界の流れを先読みし、時流に流されず理詰めで行動する。こういった、ぶれないマツダの骨太なクルマ作りが、現在の高評価なクルマを生み出してきた。この成功を再現し持続させることが今後の課題だ。
<続きはコメント欄で>
日刊工業新聞2016年4月12日「社説」