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NTT東がAI実証で北大と連携する狙い

動物の生態管理・手話翻訳
NTT東がAI実証で北大と連携する狙い

スマートイノベーションラボは、NTT蔵前ビルに開いたのと同種のものを札幌市内に新設する

 NTT東日本は北海道大学と連携し、人工知能(AI)を用いた実証実験を道内で実施する。年内に札幌市内で新設するAI・IoT(モノのインターネット)検証施設を活用し、札幌市円山動物園(札幌市中央区)の動物の生態管理を効率化するAIシステムを実証する計画。AIを用いて手話をリアルタイムに翻訳するシステムの実証も検討する。

 円山動物園ではホッキョクグマなど動物の行動をセンサーで24時間記録。ビッグデータ(大量データ)化した動物の行動記録をAIで分析し、最適な餌やりの時間などを導き出す。

 手話翻訳システムは、カメラで撮影した手話の映像をAIが分析してリアルタイムに翻訳する。道内の観光地の店舗では聴覚障がい者とのコミュニケーション手段に筆談を用いる場合が多いが、訪日外国人の増加により筆談以外のコミュニケーションが求められている。手話は国・地域によりジェスチャーが異なるため、外国人の手話も翻訳できるようにする。

 こうしたAIシステムを運用・検証できる施設「スマートイノベーションラボ」をNTT東が札幌市内に持つ通信ビル内に新設する。AI学習に必要なデータの高速処理が可能な専用サーバーやクラウドへの安全な接続環境を提供する。

 NTT東は2018年6月にNTT蔵前ビル(東京都台東区)で同ラボを始めており、札幌は2拠点目。20年3月までに仙台市内でも同ラボを新設し、東北大学と連携した農業・漁業向けのAI・IoT実証を行う。今後は3カ所以外に地方の中核都市にも開設し、現地の企業や大学と地域特有の課題をAIで解決するシステムの開発を進める。

日刊工業新聞2019年6月19日



電話局を有効活用、AI検証環境を望む企業や大学に応える 

出典:日刊工業新聞2019年1月25日


 NTT東日本は2019年度をめどに、自社の電話局やデータセンターを活用した共同実証環境「スマートイノベーションラボ」を地方の中核都市に新設する。18年6月にNTT蔵前ビル(東京都台東区)で同ラボを始めたが、仙台市や札幌市など各県の中核拠点にある通信ビルにも設置し、人工知能(AI)・IoT(モノのインターネット)技術の検証に必要な通信環境を現地の企業や大学に提供する。

 スマートイノベーションラボは、NTT東が各地に保有する電話局やデータセンターで低遅延な通信が可能な検証環境を提供。閉域ネットワーク接続で米アマゾンウェブサービス(AWS)などのクラウドや学術情報ネットワーク(SINET)と安全に通信できるようにする。

 第1号拠点の蔵前ビルでは、AI学習に必要なデータの高速処理が可能な専用サーバーを設置した。ディープラーニング(深層学習)を従来に比べ最大5倍高速化できるNTTグループの技術を活用できるほか、パートナー企業や大学との共同作業室もある。すでに埼玉県の中小製造業などとAI導入による生産性向上の検証を行った。

 高齢化や人手不足対策といった社会課題の解決に向け、地方の中小企業にもAI・IoT技術の活用に向けた動きが広がっている。ただ、データ通信量の増加に対応するには、センサーやカメラなどの近くでデータ処理を行うエッジ拠点を設置して通信量を削減し、安全性を確保しなければならない。

 AI・IoTの有効性を検証できる環境を望む企業や大学も増えていることから、NTT東は各地に持つ電話局やデータセンターを活用した検証環境を地方にも設置する。

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