NTTのAI・IoT戦略に不可欠だったアイルランド企業の正体

NTTコムウェア、ユビキューブの筆頭株主に

 NTTコムウェア(東京都港区、栗島聡社長、03・5463・5776)が、複雑なITインフラの統合や運用を自動化するオーケストレーションソフトウエアを開発するアイルランドのユビキューブ(ダブリン市)の筆頭株主になった。きっかけを作ったのは、NTTグループの持ち株会社であるNTTの澤田純社長。人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)により、あらゆる産業をスマート化するNTTの成長戦略「スマートワールド構想」にユビキューブの技術が不可欠だったからだ。(文=編集委員・水嶋真人)

 「非常に面白い技術を持つ会社がある。詳細を調べてみてはどうか」。2017年夏、当時NTTセキュリティ社長だった澤田氏が14年設立のスタートアップ企業、ユビキューブを栗島社長に紹介した。NTTセキュリティのサービスの設定自動化を短期間で実現したユビキューブの技術を澤田氏が高く評価したからだ。

 18年12月にはNTTコムウェアがユビキューブへの出資と業務提携を発表。19年4月にユビキューブが2000万ドル(約22億円)の資金調達を実施すると発表していた。

 背景には、米ラスベガス市が人工知能(AI)やセンサーを用いて都市をスマート化するNTTのITシステムを4月に商用化したことがある。ITシステムの基盤には、ユビキューブの技術を使ったNTTコムウェアのITインフラ運用自動化サービス「スマートクラウド・オーケストレータ」が使われた。ダウンタウンに配置した監視カメラや音響センサー計30台から得た群衆の動きや量、交通状況、事件性の高い音声などをデータセンターに集めてAIで分析し、事件発生を事前に察知する。

 同サービスはラスベガス市のITシステムを構成する複数のネットワークやIT機器、アプリケーション(応用ソフト)を統合的に管理可能にする。メーカー間で異なるネットワーク機器の設定作業や運用手順を自動化するだけでなく、負荷状況に応じてデータセンターの処理能力を自動で最適化する仕組み。ビッグデータ(大量データ)を活用した渋滞予測、顔認証を用いた迷子探索など、ラスベガス市が計画する機能拡張にも柔軟に対応できる。

 澤田社長はスマートシティー化システムについて「23年までに全米100都市へ導入し累計10億ドル(約1100億円)の売り上げを目指す」との目標を掲げる。異なるメーカー間のIT機器やネットワーク、アプリを柔軟につなげて統合的に自動運用する“オーケストレーション技術”で米アマゾンや米グーグルなどのGAFAと差別化する狙いだ。ユビキューブの技術は、オーケストレーションの中核基盤となるだけでなく、NTTグループのITシステムへの活用も検討し、コスト削減やIT技術者の負担削減につなげる。

日刊工業新聞2019年5月23日

  

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