トヨタ社長から何度もダメ出し、「スープラ」開発者がこだわった楽しみ方

スポーツカーの世界がさらに広がる

 【GAZOOレーシングカンパニー GR統括部主査 多田哲哉氏】

 17年ぶりの復活となる5代目だ。初代から続く直列6気筒エンジンと、フロントエンジン・リアドライブを継承している。低重心にこだわり、ホイールベース(前後輪の間隔)とトレッド(左右輪の間隔)の比率を1・55と小さく抑えた。ハンドルを切った際の反応性を高め、乗り手と一体となった運転性能を実現した。
 
 馬力を上げる際に肝となる冷却方法も工夫し、市販では最もグリップ力の高いタイヤを選ぶなど、車の走る限界を高めた。レース仕様の車を試作・テストし、その結果を市販車にフィードバックした。トヨタ自動車では一度もやったことがなかったことだ。モータースポーツ活動で培ったノウハウが生かされている。

 開発では独BMWと協業した。新しいプラットフォーム(車台)を両社で開発し共有した後は、それぞれのチームに分かれて独自の開発を進めた。同社のスポーツ車「Z4」と兄弟車ではあるが、トヨタ独自の味付けをしており、全く違う。内外装の目に見えるパーツで言うと、9割くらいは異なる部品だ。

 走行性能の評価では、トヨタのマスターテストドライバーだった故・成瀬弘氏の弟子であるヘルフィ・ダーネンス氏がテストドライバーを担当し、サスペンション、エンジン、変速機など、すべてのテイストを決めた。彼が担当したことがこの車のDNAを受け継ぐことができた一番のポイントだと思う。

 生産はオーストリアのマグナ・シュタイヤーに委託している。少量生産の凝った車づくりが得意な会社だ。欧州ではエンジンなど、規模によらずさまざまなノウハウを持ったメーカーがたくさんあり、車づくりに上手に活用している。トヨタも外部のノウハウを活用できるようになってきたのかな、と感じている。

 開発過程では豊田章男社長から「これでスープラの名前を受け継げるのか」と、何度もダメ出しを受けた。そのくらい「スープラ」という名前は重い。

 誰でも簡単に乗れるスポーツカーではないが、ジェット戦闘機に乗るような感覚を味わえる。サーキットで走るのももちろんいいが、そこだけでは伝わらない楽しみ方を生み出してもらい、スポーツカーの世界がさらに広がることを期待している。
兄弟車「Z4」とは目に見える内外装部品で9割は異なる


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日刊工業新聞2019年6月18日

政年 佐貴惠

政年 佐貴惠
06月19日
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ファンが待ちに待った復活で盛り上がりを見せている。別のスポーツ車「86(ハチロク)」は若者という新市場を切り開いた。より本格的なスポーツ車であるスープラで、さらにユーザーを深耕し新たな層を取り込めるか。クルマファンの裾野を広げるには、体験の機会を増やすこともカギになりそうだ。

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