開発者の本音、なぜ「ピンククラウン」は消えたのか

「お客さまが付いてきてくれないという悩みがあった」

<トヨタ自動車ミッドサイズビークルカンパニーMS製品企画ZSチーフエンジニア・秋山晃氏>

 15代目のクラウンの開発では、世界中のどこでも戦える「世界基準をすべて凌駕(りょうが)するクルマをつくる」と心に決めた。

 14代目はデザインのイメージを大きく変え、ピンクのクラウンや空色、若草色を採用するなどいろいろなことに挑戦したが、新しいお客さまが付いてきてくれないという悩みがあった。

 買っていただけなかったお客さまにうかがうと、「クラウンはタクシーやパトカー、法人向けでしょう」という意見がものすごく多いことが分かった。

 そのため“ザ・クラウン”として、これまでのショーファーユースの「マジェスタ」や法人ユースの「ロイヤル」、パーソナル向けの「アスリート」を一つにしてスポーティーかつエレガントなセダンに変えていくことにした。法人ユースでもアスリートが使われていたので、時代はパーソナルも法人も区別がないと判断した。

 クラウンは国内専用車だが、欧州などの輸入車のお客さまを取り込むためには、対等以上に戦えないといけない。新しい武器である新設計思想「TNGA」のプラットフォーム(車台)をベースに徹底的に細部までこだわり、鍛え上げた。ボディー剛性を大幅に高め、衝突安全性能も大きく向上させた。

 走行性能で狙ったのは、一発で決まる正確でシャープなステアリングと、低速から走行まで目線が動かない安定した走り。世界一過酷なサーキットと言われるドイツのニュルブルクリンクに1週間クルマを持ち込み、カントリー路を徹底的に走り込んでチューニングを手直しした。

 日本のお客さまのために全幅が1800ミリメートル、回転半径も5・3メートルと道幅が狭く、小回りが必要な道路環境でも安心して運転できるパッケージにこだわった。

 パワートレーンでは排気量2000ccターボチャージャー(過給器)エンジンは輸入車からの乗り換えを狙い、同2500ccのハイブリッド車(HV)は従来のクラウンからの乗り換えの位置付けで、同3500ccHVはラグジュアリー(高級)なクルマを意識した。

 機能を拡張するコネクテッド(つながる)技術を採用し、新しくコネクテッドカーとして生まれ変わった。60代以上のお客さまが多いので、40―50代にもっと購入してほしい。

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
07月28日
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トヨタ自動車が本格展開するコネクテッドカーの口火を切る新型クラウン。しかし、その走りやデザインへのこだわりに迫力を感じた。独メルセデス・ベンツや独BMWに対抗するのはトヨタでは高級車ブランド「レクサス」だが、国内ではクラウンも真っ向勝負する構え。歴史のあるクルマだけに、保守的なイメージを払拭(ふっしょく)してさらに飛躍できるか勝負の時を迎えている。
(名古屋・今村博之)

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