拡大する「子育Tech」、ITと愛情をどう両立させる?

 育児におけるIT(情報技術)・テクノロジー活用が進み始めている。2018年10月、カラダノートを発起人として、ITベンチャー企業5社が集まり、「子育Tech委員会」が発足した。IT・テクノロジーを活用することによって育児を効率化し、心身ともにゆとりある子育て環境を実現することを目的としている。11月には同委員会に参画する企業が10社に増え、今後も段階的に増えていく見通しだ。

 参画企業各社が提供するサービスは主に個人向けで、育児に関する記録・共有アプリである「ママびより」「授乳ノート」をはじめ、絵本の読み聞かせ動画を中心とした知育動画の「キッズチューブ」、子供の送迎や、託児を顔見知り同士で頼り合うアプリ「子育てシェア」などがある。

 25―44歳の女性就業率は70%を超え、育児をしながら働いている女性は徐々に増えている。母親が育児にかけられる時間は少なくなり、不足分を補うために父親や祖父母による育児が必要になっている。

 その場合、育児に関する情報を母親だけで完結させず、記録や写真などといった共有機能によって、複数の保育者間でコミュニケーションを図ることが必要になる。コミュニケーションの円滑化は母親の育児に対する不安やストレスも緩和する。

 保育園では保育士の負担軽減のため、先行してIT・テクノロジーの活用を進めている。手書きの連絡帳はWEB入力に置き換わり、健康診断の結果や予防接種の記録、食事の内容など、保育士と保護者間で常に最新の情報共有されるようになった。また乳児の心拍確認モニターや、子供の顔認識機能付きの写真注文ツールなどが相次いで開発され普及し始めている。

 日本では単なる作業を含めて手間暇をかけることが愛情であると捉える傾向があり、保育者が作業を減らして効率的に育児をすることに否定的な価値観もある。特に祖父母世代に多い。

 子育Tech委員会では、テクノロジーを用いた育児サービスに触れるイベントを通じて、効率化に対する否定的な価値観を変えていきたいと考えている。

 保育者の育児にかかる心身の負担をテクノロジーで軽減し、ゆとりある育児を実現できる社会を目指す。今後の育児におけるテクノロジー活用に注目したい。
(文=杉本佳美<野村リサーチ・アンド・アドバイザリーヘルスケアセクター>)

日刊工業新聞2019年5月22日

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