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企業の育児支援制度、活用には「ガイドブックよりランチ会」のワケ

シチズン時計「本音で話し合える雰囲気作り」
企業の育児支援制度、活用には「ガイドブックよりランチ会」のワケ

女性社員らが集まって開いたランチ会

 シチズン時計が、仕事と育児の両立ができる働きやすい職場環境づくりに力を注いでいる。育児問題を抱えたパパ・ママ社員らと人事部スタッフとで社内ランチ会をこのほど開催し、男性社員2人、女性社員8人の合計10人が参加した。夫婦で参加した人もいた。時差出勤やフレックスタイム(時差勤務)、期間限定の派遣社員採用など育児を支援する制度はいろいろあるが、社内で意外と知られていない。そのギャップをランチ会の話などで埋め、安心感を与える狙い。今回の開催を機に定例開催し、支援制度の周知と同時に「部署や年代を超えた相互理解へつなげたい」(須永政利人事部長)考えだ。

 シチズン時計は2018年1月に「仕事と家庭の両立ガイドブック」を作成。就業時間の短縮や育児休職などの支援措置が示されているが、社員への認知度はいまひとつだった。ランチ会の方式にしたのは外部講師の説明でなく、同社の話として現実に即した内容にするため。

 呼びかけも“育児期の制度運用について興味のある方”とし、役員の参加も見送った。上司などの目を気にせず「本音で話し合える雰囲気作りを狙った」(小林由佳人財開発課長)という。

 ランチ会参加者は子どもがいる人、これから子どもを考える人がほぼ半々。支援制度の理解や認知が深まれば安心して出産もできる。早めに制度内容を知ることで、「自身の生涯のキャリア設計にも生かせる」(小林課長)とみる。

 出産や育児で同期入社の社員とキャリアで差がつき、今後の不安を抱える社員もいる。育児後の復職支援制度は他社にもあるが、元いた部署へは他の社員が入っているため戻れないケースもある。育児などで不安を抱える社員にとって新しい部署での復職は二重のストレスだ。そうした事態を防ぐ派遣社員採用制度の説明に加え、早退などでまわりに気兼ねすることのないよう上司層への研修にも力を入れていく。

 育児だけでなく、今後は介護などでも同様のケースが増えてくることが予想される。貴重な社員のキャリアを退職などで失うことがないようランチ会をはじめ周知活動に取り組んでいく。
日刊工業新聞2019年4月15日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
ガイドブックは便利ですが、手渡されても「いつでも確認できるから」と読むのを後回しにしがちです。以前は制度作りが話題の中心にあったように思いますが、今後はいかに使ってもらえるか各社の工夫にさらに注目が集まるのでしょうか。

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