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自動車各社、大半が販売増を計画も「量より質」のワケ

市場激変、ブランド力で値引きをせずに売り切る
自動車各社、大半が販売増を計画も「量より質」のワケ

トヨタは中国での伸びは大半(豊田章男社長)

 乗用車7社の2020年3月期の世界販売は6社が前期比増加を見込む。トヨタ自動車は中国がけん引し、マツダやSUBARU(スバル)は米国などで伸ばし増加に転じる見通し。一方、中長期視点では日産自動車が中期計画を下方修正したり、ホンダが派生モデル削減を打ち出したりするなど縮小の動きも目立つ。経営の重点を「量より質」にシフトしブランド力や収益力向上を図る狙いだ。

 乗用車7社合計の20年3月期の世界販売は前期比0・6%増の2875万8000台となる見込み。自動車の2大市場である米中の全体需要は振るわないが、その中でも日本メーカーは商機を見いだす。

 トヨタは年度ベースの中国販売計画を公表していないが、世界販売見込みの前期からの増加分(13万7000台)は「主に中国によるもの」(白柳正義執行役員)。沿岸部との需要の違いに対応し内陸部に小型車を投入するなど工夫する。

 また米国ではマツダは新世代技術を搭載した新型車を拡販し、スバルはスポーツ多目的車(SUV)「アウトバック」の新モデルを秋に投入し販売増を目指す。米国ではインセンティブ(販売奨励金)抑制など収益性向上が課題となる。

 一方、日産は23年3月期までの中期経営計画で掲げた拡大路線を見直し、余剰生産の削減や事業効率化を急ぐ考えを示した。ホンダは世界展開するグローバル車種の派生モデル数を現在の3分の1に減らすなどし、世界生産コストを25年までに18年比10%削減する計画を示した。

 またマツダは24年3月期に200万台としていた世界販売目標を、25年3月期に180万台と引き下げた。三菱自動車の益子修会長兼最高経営責任者(CEO)も今後の経営について「拡大や成長から距離を置き、規模は小さくても収益力がある存在を目指す」と方向性を示した。

 各社が「量より質」に戦略をシフトする背景には、世界市場の潮目が拡大から停滞へと変化したことが背景にある。販売競争が激化する中、ブランド力を武器に値引きをせずに売り切る力がより一層問われるようになった。また電動化など新技術でライバルに遅れぬよう十分な研究開発費を確保する必要にも迫られている。倉石誠司ホンダ副社長は「環境規制が厳しくなる中、(車づくりの)効率化が不可欠」と指摘する。
                             
日刊工業新聞2019年5月16日

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