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産学連携事業のエピスト、AI分野で10億円ファンドの狙い

今夏にも立ち上げ
 epiST(エピスト、東京都新宿区、上村〈うえむら〉崇社長、03・6856・7722)は、データサイエンスと人工知能(AI)の分野でのVB投資と産学連携支援の活動を開始した。大学関連を含むベンチャー(VB)のファンド運営子会社をこのほど設立、夏にも10億円規模のファンドを立ち上げる。同分野のVBで創業・上場させた経験を持つ上村社長のネットワークを強みに、共同研究や博士人材採用の企業ニーズと、大学の産学連携部門をつなげる活動も進めていく。

 4月に設立した「epiST Ventures」は、エピストの100%子会社のファンド投資会社で、所在地や社長は同社と同じだ。新ファンドへの出資は金融や事業会社から募り、出資の事業会社と投資先VBの協業を重視する。

 エピストの上村社長はコンサルタント出身で、データサイエンス・AI分野でALBERT(アルベルト)を創業、マザーズ上場を果たした。同分野の博士人材採用や大学とのネットワーク構築を行う中で産学連携の問題点を実感。1月にエピストを立ちあげ、アルベルト社長退任の3月に事業を開始した。

 同分野は企業ニーズが高いが、共同研究先は著名大学・研究者に偏っている。上村社長は「トップクラスの大学以外でも潜在力のある研究者や研究テーマは多い」とみる。

 エピストは企業の戦略支援に軸足を置きながら、構築してきた独自の研究者データベースや、地方大学などの産学連携部局を活用して研究者との連携を後押しする。

 当初のターゲットは同分野と、関連のロボティクス、IoT(モノのインターネット)だ。共同研究に向けた産学連携イベントも、大学や官庁と異なり企業に強い点を生かして設計する。

                   
日刊工業新聞2019年5月9日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
キーワードがてんこ盛りで、初めての取材先だったが目を丸くしてしまった。データサイエンス、AIは社会ニーズが強く、人材不足が半端でない。「これだけデータ教育を手がける大学が広まると、講師も研究データの統計解析を手がけたレベルの教員なのかなあ」と思うことがある。しかし同社は、この分野のVBでマザーズ上場を果たした創業者元社長が、満を持して始めたものだ。産学の信頼や期待は高いものになるだろう。

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