大学の自主財源増大へ、産学連携に新制度の中身

政府が導入の検討に入った

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 政府は、大学や国立研究開発法人(国研)が大型の産学共同研究を手がける子会社を新設するための新制度導入の検討に入った。子会社は、クロスアポイントメント(複数組織との雇用契約)により研究者を雇用し、共同研究の成果による収益を寄付として大学や国研に還元する仕組みで、大学・国研の自主財源増大に結びつける。政府が6月にまとめる「統合イノベーション戦略」に盛り込む方針。2020年の法改正、21年の施行を視野に入れる。 

 国立大や国研はベンチャー企業への投資や技術移転を目的とする会社は設立できるが、共同研究のための会社は設立できなかった。

 大学・国研の外部に設置する子会社(民間会社)「共同研究等実施法人」(仮称)は、大学が1企業と組む「競争領域」(目的を実際の製品などにどう活用するかという領域)での応用研究の受け皿を担う。新会社への出資は大学・国研1機関にとどまらず、地域や特定領域の複数機関でも可能とする。

 大学内の産学連携部局は、研究者の人件費や施設・設備の使用対価を連携企業から徴収できていなかった。新会社がビジネスとして適切に算定すれば、共同研究費の大幅な引き上げが期待される。産学連携に携わる教員は新会社の給与で優遇し、合わせて運営費交付金による大学の人件費負担も減らせる。大学・国研が受け取る収益は年度や使用目的の制限がない新財源となる。

 新制度発足に向け、国立大学・国研による子会社への出資認可や、公私立大学も含む研究開発税制の優遇などの後押しも期待される。内閣府が主体となり文部科学省、経済産業省などと議論を進めている。科学技術・イノベーション活性化法や国立大学法人法の改正を20年の通常国会で成立させ、21年に施行するというのが実現に向けた最速の日程となる。
                

日刊工業新聞2019年3月26日

COMMENT

山本佳世子
科学技術部
論説委員兼編集委員

「いくらで共同研究ができるかという算定ですが、弊社で扱う案件は、大手1社の戦略事業分野で、親会社に当たる大学が全力で取り組むもの、というのが前提です。ご満足いく成果をお約束しますよ。今回は工学部A先生は5割、経営学部B先生と情報学部C先生は1割として、C先生は著名人ですから上乗せもして、人件費合計はこれくらいです。購入すると数億円の大型装置の使用料、それに建物の償却分と、光熱水費を合わせてこれくらい。知財や企画の社員の給与など弊社のコストがこれくらい。合計で▽円となります。利益のうち△割を大学に寄付で還元する計画ですのでご理解ください。えっ、御社の当初のご計画では○円だった、ですって? それはまたずいぶん時代遅れの感覚ですね」。新会社による産学共同研究の交渉は、こんな形になるのだろうか。従来の産学連携は双方とも負担も成果もたいしたことがなく、中途半端なままだった。新会社で、それを解消するきちんとした仕組みの整備を期待したい。

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