JSTのベンチャー出資が好調、民間投資を呼び込んだ目利き力

次の課題は出口に向けた支援

 科学技術振興機構(JST)が創業期のJST発ベンチャー(VB)に行う出資事業が、投資実績を順調に伸ばしている。25億円のファンドで、5年間で8割を活用して24件に投資した。技術の目利きや、経営に過度に踏み込まない支援体制が好評で、JST出資の8―9倍の民間投資を引き出しているという。投資は2019年度中に完了見込みで、上場や企業の合併・買収(M&A)など出口に向けた支援が次の課題となりそうだ。

 14年度開始の出資事業「サクセス」は、JSTの研究開発成果を生かしたVBが支援対象だ。相談件数は累計約300件。投資案件のうち約半分がライフサイエンスで、モノづくり系も多い。「戦略的創造研究推進事業など、基礎研究の成果によるVBも増えた」と白木沢(しろきざわ)佳子理事は、JSTらしさを強調する。

 04年の国立大学法人化前後の大学発VBブームでは、研究者側と経営者・ベンチャーキャピタル(VC)側のなじみの悪さが問題になった。同事業は大学人の不安を解消するよう設計されている。出資は総議決権の2分の1を超えない範囲。役員派遣はしない。JST同事業チームはVB・VCのプロなど約12人だが、投資先の会議での発言は中立的。JSTが産学連携などで関わる事業会社を、VBの顧客として紹介する点も魅力だ。

 一方、民間VCがうれしいのは、JSTの技術の目利き力だ。そしてVBの初期の支援をJSTが手がけた後なら、上場利益などでビジネスを回すVCも出資しやすい。この結果、「VCの出資を促す“呼び水効果”は予想以上になった」(白木沢理事)という。

 東京大学など4国立大の出資事業では、子会社のVCが主体で、民間VCと競る面がある。今春から多くの国立研究開発法人で可能になったVB直接投資は、利益相反に注意がいる。それだけにJSTの中立性は大きなポイントだ。

 2―3年内の上場を準備するVBも出てきた。BツーB(企業間)のモノづくり系は生産設備を整備する段階で事業会社のM&Aも視野に入る。どんなJSTらしさが発揮されるか注目されそうだ。
(文=編集委員・山本佳世子)

               

日刊工業新聞2019年4月25日

山本 佳世子

山本 佳世子
04月26日
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好転と悪化の変化が大きいのがベンチャー(VB)関連の環境の特徴だ。起業前後のVBに投資する民間VCも近年は増えて明るいが、JSTや4国立大のファンドが議論された当時はそうではなかった。その意味で新しい仕組みは、官と民の両方でバランスを取りながら、伸長させ定着させていくのが望ましいのだろう。

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