期待大もいまだ手探り・・・eスポーツで地域振興はどこまでできる?

 コンピューターゲームの対戦をスポーツ競技として捉える「eスポーツ」に注目する地方自治体が増えている。地域の文化振興や観光客の呼び込みなどにつなげるためだ。ゲーム総合誌『ファミ通』を出版するGzブレイン(東京都中央区)の統計によると、2018年の国内eスポーツ市場は前年比13倍の48億円という急成長ぶり。しかし、黎明(れいめい)期ゆえに未整備な点が多く、現場では手探りの状況が続く。

競技しやすい


 今秋、茨城県で開催される「いきいき茨城ゆめ国体」。国体の文化プログラムとして本格的にeスポーツが扱われる。競技はパズルゲーム「ぷよぷよeスポーツ」、サッカーゲーム「ウイニングイレブン2019」、レースゲーム「グランツーリスモSPORT」の3種目。各都道府県の予選を勝ち上がったチームが激突する。

 eスポーツは年齢や性別を超えて競技しやすい。茨城県の西野浩二国体・障害者スポーツ大会局参事兼総務企画課長は「障がい者と健常者が同じステージで戦う種目があることを示したい」と強調。共生社会の理解促進にもeスポーツが貢献するとみる。

 施設運営の面で動き始めた自治体もある。京都府は今年、建設中の「京都スタジアム」(京都府亀岡市)に追加予算約2億円を付け、eスポーツ施設を併設する方針を決めた。サッカーや野球などの大会と、eスポーツ大会を両方開催できるようにして、観客動員数を増やす考え。

 施設付近には京都・嵐山へ抜ける「保津川下り」の船着き場があり、施設とセットにして新たな観光ルートの整備も進め、新しい層の観光客誘致も目指している。

地域を意識


 一方、地元産業への波及効果は限定的との見方もある。そもそもeスポーツは「スポーツ」なのか「産業」なのか。「複合的な要素があり、特定の部門だけでとらえるのが難しい」(京都府商工労働観光部ものづくり振興課の西村敏弘課長)。支援対象を絞りにくく、政策を打ち出しにくいのが実情だ。

 イベントを開催する企業側も、地域を意識した戦略を打ち出す。カプコンは19年初頭に格闘ゲーム「ストリートファイター」の大規模な国内リーグを都内で開催した。今後は同様のイベントを、複数の自治体と組んで地方で開催する予定という。カプコンの綾野智章プロデューサーは「eスポーツはゲーム機、ユーザー、実況があれば成り立つ」と、地方展開のしやすさを語る。

 ただ、主催企業は低収益という厳しい現実に直面している。実は業界全体でも、eスポーツ事業単独で黒字化している例はほとんどないとされる。

 収益源の内訳を見ると、スポンサー料が7割以上を占め、放映権料、チケット販売などが続く。収益安定化には参加人口を増やし、チケット販売などの割合を増やすことが重要だ。カプコンは地方での開催実績を積むことで、収益モデルを早期に確立する考えだ。

 注目度が高まる一方、試行錯誤が続くeスポーツ。一過性のブームに終わらせず市場拡大できるかは、自治体と企業の連携にかかっている。

共通ルール


 eスポーツ市場の拡大に足並みを合わせ、業界としての共通ルールの形成も進みつつある。18年にゲームの知的財産権を保有する会社を巻き込む形で、日本eスポーツ連合(JeSU)が発足。賞金提供のあり方や選手育成、プロライセンスの発行などさまざまな議論が進む。JeSU設立によりeスポーツ市場が「社会的に理解されはじめた」(立命館大学映像学部の中村彰憲教授)。

 中村教授は、今後の課題は「人口が少ない国内に固執すると、小さいパイの奪い合いに陥る。訪日外国人を見込んで展開すれば、地域振興にもつながる」と言う。eスポーツの世界市場は22年に約18億ドル(現状約11億ドル)に膨らむとの推計があり、「国際的な団体との連携も必要だ」と指摘する。
(文=大阪・園尾雅之)
          

日刊工業新聞2019年5月6日

  

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