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任天堂社長「時間はかかるがスマホ向け事業を収益の柱に」

古川俊太郎氏インタビュー「大ヒットを狙う」
任天堂社長「時間はかかるがスマホ向け事業を収益の柱に」

任天堂「スーパーマリオ ラン」公式ツイッターより

 ―家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ」向けの自社ソフトウエアを、2018年10―12月に4本発売しました。
 「それぞれ順調に販売が伸びている。その中でも12月に発売した対戦アクションゲーム『大乱闘スマッシュブラザーズ スペシャル』は、初週の世界販売本数が500万本を超えた。スイッチ向けソフトはもちろん、テレビとつなげる当社の据え置き型ゲーム機向けでも歴代1位の速さだ。ソフトと合わせてスイッチの販売も11月中旬から勢いが出てる」

 ―ゲーム事業はスマートフォン向けを強化しています。
 「ゲーム機だけでなくスマホにも展開すると、ゲームのキャラクターを世界へ普及する力が格段に高まる。スイッチの販売は現在約60カ国だが、スマホ向けゲーム『スーパーマリオ ラン』は150カ国近くに普及している。時間はかかるが、スマホ向け事業を収益の柱の一つにしたい。複数のアプリケーション(応用ソフト)で複数分野へ展開しながら大ヒットを狙う」

 ―ディー・エヌ・エー(DeNA)などと提携していますが、さらなる協業の方針は。
 「DeNAとはスマホ事業を始める時から提携しており(関係の)度合いが違う。スイッチでも使っているアカウントシステムや複数アプリのサーバーの開発を進めている。提携は“良いお話”があれば検討する」

 ―ゲーム対戦競技「eスポーツ」と距離を取っているように見受けられます。
 「そういう印象を与えているようだ。当社のゲームは人と対戦し、周囲が盛り上がる。この楽しさの根幹はeスポーツと通じる。その上で当社が目指すのは、年齢やゲーム経験の深浅を問わない、さまざまな方が参加するゲーム大会だ」
 
 ―ゲームの形態が多様化する中、開発人材を獲得する戦略は。
 「長期的な視野で考えている。競争力の源泉は社内の人材の総合力だ。独創的で時代に合わせて柔軟に変化できる人材を求めている。(業界の)競争が激しさを増す中、インターンシップ(就業体験)や採用広報などは、以前と比べて積極的に進めていく」
古川俊太郎氏

【記者の目】
 稼ぐ力の柱に育成を狙うスマホ向け事業は、ハードであるゲーム機の購入を前提としない。このため参入障壁が低く、成長が見込めるアジアなど海外市場の深耕に最適。一方、ハードとソフトが連動し利益を生み出す従来のビジネスモデルは最重視する。世界的にスマホというハードが普及する中、ゲーム機やソフトとのシナジーが課題だ。
(文=京都・日下宗大)
日刊工業新聞2019年1月16日

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