【日立建機】収益拡大の要は巨大情報インフラだ

連載・企業研究/日立建機(3)

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コンサイトをスマートフォンに対応させた
 建設機械の稼働状況を監視する日立建機のサービス「コンサイト」の開発部長を務める猪瀬聡志は、若手だったころ建機の油や汗にまみれながら、顧客に対応した経験を持つ。FAXが当時の連絡手段で、情報のやりとりに多くの時間がかかった。仕事を効率化したい思いを募らせていった猪瀬は、「コンサイトはすべての知見を詰め込んで開発した」と振り返る。

 日立建機にとってコンサイトは顧客や販売代理店、地域統括会社をつなぐ巨大な情報インフラだ。社長の平野耕太郎はコンサイトを通じた顧客との接点を“健康診断”に例える。建機の状況を監視し、点検や部品交換などのサービスを提案できる。2018年末時点で、コンサイトの契約台数は12万台を超えた。建機の販売以外で売上高の半分を稼ぐことを狙う同社にとって、コンサイトは戦略の要だ。

リポート自動作成


 建機業界ではコマツが建機の稼働監視サービス「コムトラックス」をいち早く開始したが、日立建機も負けていない。現場に情報通信技術(ICT)を導入する動きが広がっているのに伴い、スマートフォンでコンサイトを手軽に使えるようにした。担当者が点検した箇所などをスマホで撮影するだけでリポートを自動作成する。

 顧客への説明が苦手だった担当者も、分かりやすく報告できる。これにより効果がはっきりと出たのが修理の提案件数だ。1カ月当たりの提案が、コンサイトのスマホ対応前と比べて約20倍の1万件に増えた。

 日立建機はコンサイトで故障予兆をとらえる精度の向上を狙っている。17年時点で検知率が37%だったが、20年以降は90%に高める方針。精度を飛躍的に上げるために活用するのが人工知能(AI)だ。修理履歴などのビッグデータ(大量データ)を解析し、異常の傾向を推定する。

 AIを駆使することで、保守サービス事業のあり方は大きく変わる。今のところ建機に不具合が起きてから部品を供給しているが、検知率90%を実現できれば、不具合の予兆に基づいて部品を提供できる可能性がある。顧客に部品が届くまでの時間を現在よりも短縮することも見込める。

顧客接点を強化


 コンサイトの展開により顧客との接点を強化し、故障の発生を減らすだけでなく、新型機も提案しやすくなる。猪瀬は「(買い替えに伴う)2台目を売るのはサービス部門」と意気込む。稼働状況を的確につかむことで、販売手法自体も刷新し、収益拡大に結びつける。(敬称略)

連載・企業研究/日立建機


【01】売上高は1兆円の大台に…でも「規模は追わない」日立建機の真意(2019年4月29日配信)
【02】建機生産の自動化、先進する工場の中身(2019年4月30日配信)
【03】収益拡大の要は巨大情報インフラだ(2019年5月1日配信)
【04】拡大する部品再生事業が大事なこれだけの理由(2019年5月2日配信)
【05】鉱山機械のパラダイムシフト、突破のカギは“日立力”(2019年5月3日配信)
【06】社長が考える自動化技術の可能性(2019年5月4日配信)

日刊工業新聞2019年4月19日

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