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東証4市場再編議論がヤマ場、1部の扱いは?

議論が佳境に
東証4市場再編議論がヤマ場、1部の扱いは?

東証1部上場企業は2100社を超える

 日本取引所グループ(JPX)傘下の東京証券取引所が運営する東証1部、2部、ジャスダック、マザーズの再編議論が佳境を迎えている。東証が昨年10月に設置した「市場構造の在り方等に関する懇談会」(神田秀樹座長=学習院大学大学院教授)で検討を進めており、月内めどに報告書をまとめる予定。争点の一つが東証1部の扱いだ。上場基準の厳格化などが検討されていると見られ、どのような方向性を打ち出すかが注目される。

指定替え容易


 東証の上場企業数は約3600社。中でも東証1部上場企業は2100社を超え、2部、ジャスダック、マザーズに上場する企業数の合計を上回る。

 未上場企業が東証1部に直接上場する場合、250億円以上の推定時価総額が求められる。これに対し、2部やマザーズから東証1部に「指定替え」する場合、時価総額で40億円以上の条件で昇格できる。最近では、マザーズから東証1部に指定替えするケースが多く、結果、東証1部は時価総額で20兆円を超える企業から、40億円程度の企業までを含む市場となった。

整理する必要


 JPXの清田瞭最高経営責任者(CEO)は、「一般的に1部上場企業は、一流企業という認識を持たれる方も多いと思う。だが、現状の制度では、1部と2部の違いは、株式の流動性の差がポイントになっている」と指摘。市場構造について「いろいろな方から指摘を受けるようになり、一度、整理する必要があると考えていた」と話す。

 現状では、東証1部の上場基準を引き上げて一定の時価総額がある企業だけとする案や、特に優良な企業を絞り込む案などが検討されていると見られる。2部、新興企業の上場先であるジャスダックとマザーズは区分が分かりにくいとも言われており、これらの再編も濃厚だ。

 市場区分が変更されることになれば、「企業間に成長を促し、結果として取引所の競争力が高まる」と評価するのは、大和総研の神尾篤史主任研究員。企業の「昇格」意欲をかき立てることで、収益力向上も期待できる。

特色打ち出す


 ただ区分の変更によって「降格」となれば、投資家による保有株の売却や優秀な人材の確保など、難しい問題も出てくる。神尾主任研究員は「再編で生まれる新市場それぞれにブランディングが必要だ。収益が安定した企業であれば株主還元を強化するなど、特色を打ち出すことが欠かせないだろう」と指摘する。
(文=浅海宏規)
日刊工業新聞2019年3月6日

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