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東証が地銀と連携し地方発IPO後押し

 東京証券取引所が全国の地域金融機関との連携を進めている。今年は西日本シティ銀行や京都銀行など6地域の金融機関と地域経済活性化を目的に提携。その一つの施策が、拠点が東京以外にある地方企業によるIPO(新規株式公開)を推進すること。近年、全国的に分散化が進む地方企業のIPOを加速させ、資本市場全体の活性化につなげていく。

 東証によると、2017年のIPOは前年比約12%増の96社の見込みとなった。17年は日経平均株価が年後半にかけて上昇基調を続ける中、東証マザーズ市場を中心にIPOへ踏み切る動きが相次いでいる。

 地域別でみると96社の内、地方に拠点を持つ企業が34社と前年比で3社の増加。3年連続で30社台を維持し、東京本社の企業に集中しがちだったIPOの分散化が徐々に進んでいるといえる。

 こうした背景について東証を傘下に置く日本取引所グループ(JPX)の清田瞭最高経営責任者(CEO)は「地銀との協力関係を東証が進めてきた。そうした効果が一部、表れてきたと考えている」と分析する。

 実際、東証では地方企業のIPO活性化のため、地域経済に幅広いネットワークを持つ地域金融機関との包括的な提携を推進している。

 12月には九州地区の西日本シティ銀と提携。九州といえば16年に上場したJR九州がIPOの話題となったが、地区全体では自動車などの製造業を中心に幅広い産業が集積している。

 17年のIPOを見ても、博多ラーメン「一風堂」を展開する力の源ホールディングスが上場するなど、地域ならではの特色を生かしたIPOが散見される。東証は提携を通じ、九州地区で企業のスタートアップからIPOに至るまで成長ステージに合わせた連携を進める考えだ。

 東証によると今後も証券会社が持つIPOの予備件数は高水準にあるとされ、「18年も17年と同程度のIPOが期待できる」という声がある。
                      


日刊工業新聞2017年12月19日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
18年も全体で多くのIPOが予想される中で、地方企業のIPOも4年連続で30社以上を維持できるのか。清田CEOは「今後も各地域でIPOできるように努力したい」と意気込む。IPOの全国的な活性化という意味でも、市場関係者の関心は高い。 (日刊工業新聞経済部・杉浦武士)

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