JR東日本が「ワンマン列車」を拡大する事情

2020年度から、カメラで安全確認

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3両編成以上でもワンマン運転が可能に
 JR東日本は2020年度から、3両編成以上でも運転士1人のみが乗務する「ワンマン運転」列車を広げる。最新のICT(情報通信技術)を活用し、安全性を確保しつつ省人化を進める。収益性の低いローカル線区の生産性を改善するほか、首都圏線区での運行人員を最小化することで将来の人手不足への備えも視野に入れる。

 JR東が計画するワンマン列車は、車体の側面に各ドアの乗降状況を撮影できる側車カメラを搭載。運転士が運転台でカメラの映像を通じ、安全を確認した上でドアを開閉する。すでに実証実験を進め、技術の実用化にめどをつけた。今後、ワンマン運転を実施する車両の改造工事を経て本格運用に移行する。

 JR東のワンマン列車は現在、地方線区を中心に、仙台空港アクセス線の乗り入れ列車を除き、最大2両編成で運用。運転士はホームに設けられたミラーを使って目視で安全を確認している。3両編成以上で運行する列車には乗客が少なくても車掌が乗務している。

 ワンマン列車を導入する線区では効率的な人員配置が可能になる。これまでは最大2両編成だった導入済み線区でも、乗客数に応じた車両数の最適化が可能となりそうだ。

 乗降客の多い首都圏でもホームドア設置などの設備を含めて乗降の安全性が確保できれば、ワンマン運転の導入を進める方針。私鉄や地下鉄では都市部の長編成でもワンマン運転を実施している。

 JR東は将来のドライバーレス化を念頭に自動列車運転装置(ATO)の開発を進めている。運転士の負担軽減効果も期待でき、ワンマン運転導入にも役立つと見られる。

日刊工業新聞2019年3月5日


ATOは年末年始に走行試験を実施した 

出典:日刊工業新聞2019年1月8日


 JR東日本は年末年始の終電後、山手線で自動列車運転装置(ATO)の走行試験を実施した。ATOは将来の労働力不足に備えて構想する“ドライバーレス自動運転”に必須の技術。地下鉄や新交通システムでの導入実績があるが、JR東は「より高性能なATOの開発」(深沢祐二社長)に取り組む。先々のドライバーレス化だけでなく、列車運行の高度化も狙いに、早期の実用化を目指している。

 7日未明の走行試験を報道陣に公開した。ATOを試験搭載した最新型車両「E235系」で山手線を2周して、二つの走行パターンによる走行時分を計測。運転士は駅出発時に安全を確認して発車ボタンを押すだけで、走行中はハンドルを操作せず、自動で次の駅の定位置で停止した。

 試験車はあらかじめ設定された運転曲線に追従するよう、自動で加速と惰(だ)行を繰り返した。普段とは違って細かく加速しているのが分かったが、急な加速は少なく、乗り心地は気にならなかった。得永諭一郎執行役員は「より滑らかな運転ができるようにしたい」と課題を示す。

 ATOは線路への進入危険性が低い地下鉄や新交通システムが採用する運転保安システムだ。発車から停止までの一連の運転操作を自動で行う。信号速度を超えた場合にブレーキがかかる自動列車制御装置(ATC)と組み合わせて運用する。

 山手線ではホームドア運用開始時に、ATO機能のうち、駅到着時に決められた停止減速パターンに沿って自動でブレーキを制御する定位置停止装置(TASC)を導入済み。このため、ATCの速度制限下で柔軟に速度を可変させる運転機能を中心に開発が進む。

 JR東のATOは、列車運行の高度化を狙っており、線路や駅設備、法令上のハードルがあるドライバーレス化の実現を待たずに導入する方針だ。「ヒューマンエラーを防ぎ、安全性を向上できる」(得永執行役員)とメリットを追求。自動で走行パターンに従う運転は運転品質の平準化や乗り心地向上につながる可能性を秘める。

 さらには路線全体の最適解で、各列車を運行する未来を構想し、運行管理システムとの連携を視野に入れる。ダイヤに余裕がある時は、省エネルギーに最適な走行パターンで運行。遅延発生時は、駅間で詰まらないように走行速度を調整する。乗客数に合わせて駅の停車時間を長く確保することもできそうだ。JR東は初の試験で「実用化への第一歩」(得永執行役員)を踏み出した。

ATO搭載試験車では、運転士がハンドルを操作しない(1月7日)

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