大転換期の旅行業、「料金の入った商品がなくなる」(JTB社長)

高橋広行氏インタビュー

 JTBは従来の旅行業モデルからソリューションモデルへの転換を目指し、経営改革に取り組んでいる。2018年春には地域事業会社を統合するグループの組織再編を実施、22年度に営業利益の半分を非旅行業で稼ぐ目標も設定する。旅行市場の主役がツアーや団体から個人へとシフトする中、旅行会社の将来像と改革の現状を高橋広行社長に聞いた。

―組織改革の成果はいかがですか。
「個人旅行では“製販一体”となったことで、販売サイドの声が造成サイドに届く好循環が生まれだした。これまでは作るヒトと、売るヒトとの間に壁があった。稼げるマーケットに経営資源を再配分でき、組織的な営業力も高まった。ラグビーワールドカップや東京五輪・パラリンピックのような全社的テーマに集中して取り組む体制が整えられた」

―課題解決型サービスを新たな収益の柱に狙っています。
「従来の旅行業はコミッション(手数料)モデルで利ざやが少ない。ソリューションの提供でフィー(報酬)をもらう収益構造に変える。対象の一例が、訪日客拡大に伴う地域課題だ。京都では生活の足である市バスが観光客の足となり、影響が表れている。3月から京阪ホールディングス(HD)と屋根なし2階建ての周遊バスを運行する。訪日客の移動時における手荷物の問題も深刻だ。ヤマトHDやパナソニックと手ぶら観光の仕組みを構築し、地方にも広げているところだ」

―大型のスポーツイベントが続きます。
「スポーツホスピタリティーという観戦スタイルを広げたい。見るだけでなく、試合以外の時間も楽しんでもらい、スポーツの裾野を広げる。見る、するだけでなく“支える”も重要だ。障がいを持った方々も楽しく旅行できる社会にする。日本のユニバーサルツーリズムは立ち遅れており、パラリンピックを通じて定着させたい」

―ICT(情報通信技術)の進化で旅行業の変化は不可避です。
「旅行業の大転換期を迎えている。ホテル料金や飛行機の運賃、入場料が変動する。商品もダイナミックプライシング(価格変動)対応に変わらなければならない。壁一面にパンフレットが置かれた店舗の風景が変わる。料金の入った商品がなくなる。欧州で始めた乗り合い型バスツアーのような着地型商品をいかに充実させるか、JTBならではの商品を作ることが重要だ」

記者の目/持続可能な地域作り支援


 観光は地方創生の切り札だ。JTBは交流創造の担い手としてDMC(デスティネーション・マネージメント・カンパニー)戦略を打ち出してきた。地域の課題解決は、今後かじを切るソリューションビジネスの柱でもある。地域に住む人々が持続可能な地域を作れるよう支援する、旅行会社の将来像がそこにもある。
(文=小林広幸)

日刊工業新聞2019年3月1日

  

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