光技術の世界的企業がベンチャー投資で期待する“刺激”

浜松ホトニクス・昼馬明社長に聞いた

 浜松ホトニクスが本格的なベンチャー支援に乗り出す。10億円のベンチャー投資枠を設け、社内ベンチャーの立ち上げも推進する。同社はもともと“テレビの父”と呼ばれた高柳健次郎氏の門下生が立ち上げたベンチャー。今や光技術の世界的企業に成長した同社がベンチャー育成に力を入れる理由や今後の展開を、昼馬明社長に聞いた。

―国内外のベンチャー企業への投資を始めました。

「光技術の応用産業を世界的に広げるための新組織『GSCC』を2018年4月に立ち上げた。大きな五つの機能の一つがコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)だ。光技術関連のベンチャーを発掘し、投資する。当社の技術開発はこれまで顧客企業の要望への対応が中心だった。ベンチャーとの連携で、既存事業とのシナジー効果を出していきたい」

―CVCで10億円の投資枠を設けました。

「世界のベンチャーに、私の判断で迅速に投資できる。第1弾として東京大学発ベンチャーで、感染症即時診断デバイスの研究開発を行うナノティス(東京都渋谷区)に1000万円投資した」

―どのような相乗効果に期待しますか。

「金銭的なことより、事業とのシナジーや先取りニーズを重視している。例えば将来性のあるベンチャーに当社の若い研究者やエンジニアを派遣する。そのベンチャーが軌道に乗ったら研究者を戻し、社内ベンチャーのリーダーにする。起業家精神を後進に伝える人材の育成にもつなげたい」

―社内ベンチャーへの取り組みは。

「GSCCにはインキュベーター機能もある。事業部で取り組むにはリスクが大きかったり、事業部を横断したりするプロジェクトに取り組む。各事業部からメンバーを集め、人件費はGSCCのコストセンターで管理する仕組みだ。すでに複数の候補があり、選定を進めている」

―ベンチャー支援に力を入れる意味は。

「光産業は先端技術の提供により幅広い事業領域で新たな展開を生み出す“逆ピラミッド型”。大企業がやらない新しいことに挑戦しているベンチャーやスタートアップ企業は先取りニーズの宝庫だ。当社自身が約65年前に立ち上がったベンチャー。ただ、最近は売上高が1400億円規模に成長し、大企業意識で入社する人も増えている。ベンチャーとの関わりで社員が刺激を受け、社内の起業家精神をいま一度奮い立たせたい」

【記者の目/逆ピラミッドの広がり加速】
営業利益率約20%を誇る高収益企業。一方、毎年売り上げの約1割を研究開発費に投じ10年、20年先の足の長いプロジェクトにも取り組むベンチャー気質も持ち続ける。ベンチャーの成功例となった浜松ホトニクスが次世代ベンチャーを育て、それを社内の活性化に生かす。同社が次のステージに上がったことで、逆ピラミッドの広がりが一気に加速する可能性がある。

浜松ホトニクス社長・昼馬明氏

(文=浜松支局長・田中弥生)

日刊工業新聞2019年2月7日

  

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