ニュースイッチ

ついに国内販売マイナス…日産が期待する救世主の存在

相次ぐ問題にブランド力は?
ついに国内販売マイナス…日産が期待する救世主の存在

23日に発売する日産「リーフ」の上位モデル「イープラス」

 日産自動車の国内新車販売に不振の影がちらつき始めた。2018年12月の販売は5カ月ぶりに前年同月比マイナスとなった。前会長のカルロス・ゴーン容疑者の不正問題と、4度目となる完成車検査不正の発覚が逆風だ。コーポレートガバナンス(企業統治)の徹底的な見直しと、「リーフ」シリーズなど電動化技術を生かした車両の魅力によりブランド力を回復できるかが問われる。

 日本自動車販売協会連合会(自販連)と全国軽自動車協会連合会(全軽協)のまとめによると、日産の18年12月の新車販売台数は前年同月比2・8%減の3万6888台。17年12月は無資格検査問題の影響で同約2割減と低水準だったにもかかわらず、それを下回った。

 18年11月にはゴーン容疑者が金融商品取引法違反容疑で逮捕され、同12月10日に起訴された。同日にはゴーン容疑者の不正を許した責任を問われる形で日産も起訴された。また日産は同7日には、完成検査で4度目の不正発覚を公表した。相次ぐ不祥事で販売現場への逆風が強まっている状況だ。

 遠藤功治SBI証券企業調査部長は「日産ファンはシニアが比較的多い。シニア層は保守的で、多くが日産を見守るスタンスだった。しかし度重なる検査不正とゴーン問題で、さすがに乗り換えの動きが出ているのではないか」と分析する。

 一連の問題で日産の経営管理組織から生産現場まで広がる企業統治不全が浮き彫りになった。販売の勢いを取り戻すにはその改革が欠かせない。

 日産は18年12月に設置した「ガバナンス改善特別委員会」での議論を踏まえ、改革の具体的な取り組みを始める計画にしている。取締役会への高い監督機能を特徴とする「指名委員会等設置会社」への移行など抜本的な見直しによって、「生まれ変わった日産」を消費者に訴求する必要がある。

 商品面では電動車がブランド回復の役割を担う。自販連がまとめた18年の車名別新車販売では小型車「ノート」が、登録車で日産車として初めて年間首位に立った。独自のハイブリッド技術で電気自動車(EV)と同様の乗り味を楽しめる駆動システム「eパワー」を搭載したモデルが販売の約7割を占めた。eパワーモデルを設定する「セレナ」もミニバン分野で首位となりeパワーの訴求力の高さを証明した。

 また23日にはEV「リーフ」に、上位モデル「e+(イープラス)」を追加設定して発売する。リチウムイオン電池を大容量化し、充電1回当たりの航続距離を既存モデル比で4割増の458キロメートル(WLTCモード)としたほか、加速など走行性能も高めた。開発責任者の磯部博樹CVE(チーフビークルエンジニア)は「高速道路の合流などで良さを感じてもらえるはず。東京―横浜間の高速道路を頻繁に利用するユーザーなどに最適な選択肢だ」とアピールする。

 11日にはゴーン容疑者が特別背任の罪で起訴され、日産ブランドのさらなるイメージ悪化が懸念される。ゴーン問題が落ち着き、ガバナンス改革が完了するまで電動車の魅力で顧客をつなぎ留められるか。正念場は続く。

(文=後藤信之)

 
日刊工業新聞2019年1月14日掲載
梶原洵子
梶原洵子 Kajiwara Junko 編集局第二産業部 記者
受注残があれば、すぐに新車販売はマイナスにはならないと思っていました。まだ前年比マイナスは1カ月なので、2019年1月、2月と続いていくのか見ていく必要がありますが、完成車検査問題から難しい状況が続いています。

編集部のおすすめ