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日産とルノーの資本関係は現状維持、沈静化へ“新会長"が焦点に

ゴーン問題の着地点を聞く(3)弁護士・早川吉尚氏
日産とルノーの資本関係は現状維持、沈静化へ“新会長"が焦点に

日産が独立性を高めることは難しい(西川広人社長)

 日産自動車、三菱自動車、仏ルノーのトップに君臨してきたカルロス・ゴーン容疑者が逮捕され拘留のまま年を越そうとしている。足元では3社連合の支配関係をめぐり日産と仏ルノーの間で綱引きが続く。日産は、「ゴーン支持」の色を見せていたルノーが譲歩し、日産主導で事態が動きだす展開を期待する。ルノーはこれからどう動くのか。着地点の見通しについて3人の識者に聞く。第三回は弁護士の早川吉尚氏

 ―日産・ルノー・三菱自の企業連合の形は世界的にみて珍しいのでしょうか。
 「『資本の論理が全て』というが、一般的にも特異な事例だ。99年にルノーが日産を救済したが、その後、日産が復活して規模を拡大し、さらに三菱自が加わった。日産は収益力で勝るのに、ルノーに資本で支配されるのは不満だが、昔の恩義もある。多様な要因が重なり合って、連合の均衡が保たれてきたとみる」

 ―ゴーン容疑者の突然の逮捕劇をどうみますか。
 「日産はもっと穏当な手段を選択できた。例えば会社への損害を補填すれば、不正を不問に処すといった対応だ。しかし、実際にはゴーン氏の弁明を聞くことをせず検察の逮捕に協力した。クーデターとみられる側面はある。ゴーン氏は仏政府の意向を受け、ルノーと日産の経営統合を進めようとしていた。実現すれば仏政府の都合で、仏に工場を移転するなど経済合理性のない経営判断を強制されるリスクが生じる。日産はゴーン氏の動きに強い危機感を持ったのだろう」

 ―資本関係見直し議論はどう進んでいきますか。
 「日産はゴーン氏を退場させたことで、仏政府・ルノーからの統合への圧力をいったんストップできた。その意味では目的は達成できた。仏政府・ルノーにとってゴーン氏逮捕は『そこまでやるか』と衝撃だったはず。『日産支配を高めようとすると逆効果になる』と認識したなら再度圧力が高まる可能性は低い。一方、仏政府・ルノーとしては譲歩は難しく、日産が今まで以上に独立性を高めることは難しいのではないか」

 ―現状維持で落ち着く可能性が高いということですね。今後を占う注目点は。
 「日産のゴーン氏の後任会長人事だ。連合維持を優先し事態を沈静化するには、日産、ルノー、仏政府が納得できる人物を選ぶことができるかが重要になる」

【第1回】「日産とルノーが相互に20%出資」がありえる根拠

【第2回】日産→ルノー「24.9%」、ルノー→日産「3割超」。出資比率の妥協点

 ルノーから日産への出資は43・4%なのに対し、日産からルノーへの出資は15%で議決権もない。ただ両社は「対等の精神」でシナジーを創出してきた。ゴーン容疑者はその守護神で、2015年にルノーの筆頭株主である仏政府が日産への関与を強めようとした時も盾になった。
 しかし18年に「対等の精神」の維持が脅かされる事態になった。仏政府がゴーン容疑者に対し、ルノーの最高経営責任者(CEO)の続投と引き換えに日産・ルノー連合を不可逆な関係にする条件を出した。それをゴーン容疑者が飲み、経営統合に向け動きだした。日産は、そうした動きに反発し、検察のゴーン容疑者逮捕に全面協力したとの見方が専門家の間で支配的だ。

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