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いきなり高い営業利益率、三菱自のこれまでの経営は何だったのか

「月次収益管理のPDCAをきちっとまわした」(CFO)
いきなり高い営業利益率、三菱自のこれまでの経営は何だったのか

三菱自のゴーン会長と益子CEO

 三菱自動車が25日発表した2017年4―6月期連結決算は、当期損益が229億円の黒字(前年同期は1297億円の赤字)に転換した。前年同期に計上した燃費不正問題の関連損失がなくなったことが寄与した。

 営業利益は前年同期比4・5倍の206億円。前年同期にタカタ製エアバッグの市場措置費用を計上した反動や販売台数の増加に加え、16年に資本提携した日産自動車との協業を含めたコスト低減策も奏功した。

 世界販売台数は同9・0%増の24万1000台だった。前年同期に燃費不正問題で軽自動車の販売を停止していた日本と、スポーツ多目的車(SUV)「アウトランダー」の現地生産を始めた中国の販売増加が主な要因。国内販売は同90%増の1万9000台と、15年4―6月期の水準を回復した。池谷光司副社長執行役員は「国内販売の立て直しに今後も真摯(しんし)に取り組む」と強調した。17年3月期通期の業績予想は据え置いた。
             

日刊工業新聞2017年7月26日



「どこかに課題が埋もれることがなくなってきている」


 燃費不正問題の公表から20日で1年を迎える三菱自動車。この間、資本業務提携した日産自動車の主導により、「再発防止策の実施」と「業績向上活動の推進」を柱とする社内改革に取り組んできた。開発プロセスの見直しや社員の意識改善など成果は着実に出つつあるが、人材流出で低下した開発力をどう補い、強みの個性的な商品作りにつなげていくのかにも注目が集まる。

 「課題をみんなで認識して取り組む動きが出ており、どこかに課題が埋もれることがなくなってきている」。日産から派遣され、三菱自で開発・品質を担当している山下光彦副社長執行役員は、改革に一定の手応えを示す。

 不正の再発を防ぐため、全31項目に及ぶ防止策を策定。日産を参考に開発プロセスを見直したほか、業界初となる走行試験データの自動計測システムの導入や技術者向け法規教育の制度化など、すべての施策を4月1日までに実行に移した。

 また、全社員参加型で組織や技術、文化の改善につなげる活動も展開。現状の認識と課題抽出により、構造・意識改革を図ることで同社全体の業績向上につなげる狙いだ。

 抜本的な改革が着実に進む一方、16年度の国内販売は15年度比約2割減の7万9802台と過去最低に沈んだ。ただ、服部俊彦専務執行役員は「我々の想定以上に顧客の代替え促進などが多かった」と振り返る。

 販売台数だけでなくブランド力の回復には個性的な商品開発が不可欠。「当社は特徴的なクルマ作りが強みなので、シーズではなくニーズを見据えた開発を進める」(山下副社長)と今後の開発方針を定めている。

 そのためには開発力の強化が喫緊の課題。カギを握るのが海外人材の活用だ。同社の開発体制は国内中心だったが、今後は中国や東南アジアの開発拠点も広く活用する。タイとフィリピン、インドネシアの東南アジアの開発部隊を強化するなど、グローバル開発体制の増強にも着手する。また日産からも、開発に関するアドバイスや知見の部分でサポートを得ているという。

 三菱自は16年10月に日産の出資を受け、仏ルノーを含めた連合体に参画。その中で三菱自としては「(東南アジアやSUVなど)独自の地域・商品の強みを発揮することが重要だ」と山下副社長。同社の再生は、連合体の成長に欠かせない要素でもある。

日刊工業新聞2017年4月17日

中西孝樹
中西孝樹 Nakanishi Takaki ナカニシ自動車産業リサーチ 代表
新車循環の谷間にも関わらず、「月次収益管理のPDCAをきちっとまわしたら、4.5%もの高い営業利益率が出た」というCFOの説明を聞いて、それまでの三菱自工の経営は一体何だったのかと感じる。購買を中心とするシナジーもあるが、日産的な管理手法の浸透で、引き締まった経営になってきていることは確かであろう。

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