ゴーン氏への面会、「仏政府を甘く見るな」のサイン

仏政府の思惑をフランス政治の専門家に聞く

 日産自動車・三菱自動車・仏ルノーの3社連合を主導してきたカルロス・ゴーン容疑者が逮捕され、連合の関係が揺らいでいる。ルノーの支配から脱し「対等な関係」を目指す日産と、支配力維持を目指すルノーが対立する構図だ。ルノーの背後には同社筆頭株主の仏政府の存在がある。仏政府の姿勢や日産・ルノーをめぐる思惑などについて、フランス政治に詳しい帝京大学経済学部国際経済学科のミシュラン・フランク教授に聞いた。

 ―仏政府はルノーに15%出資しています。日産とルノーの資本関係についてルメール経済・財務相が発言するなど政府の関与が目立ちます。
 「あらゆる国にとって自動車メーカーは雇用維持などで重要な存在だ。国が関与することに大きな違和感はなく、仏政府が特異とは思わない。ただ元々、フランスには『国家は国民を管理する代わりに、国民を守るべきだ』との思想がある。特にルノーは、こうした国家の役割を象徴する存在で、政府も黙ってはいられない」

 ―仏政府はルノーへの関与を強める方向にあるのでしょうか。
 「フランスは工業が衰退し、また失業率が10%前後で高止まりしている。ルノーの成長を支えた連合の枠組みを失うわけにはいかないというのが仏政府の考えで、経営統合を進めようとしたのは自然な流れだろう」

 ―ゴーン容疑者逮捕により日産・ルノーの資本関係見直し論が加速する可能性があります。仏政府の思惑をどう分析しますか。
 「現状維持というのは最低条件だろう。日本政府と交渉する場面も出てくるのではないか。これまでのところ日本政府は、仏政府に連れない反応をとっているようにみえる。仏駐日大使が留置場に出向き、ゴーン元会長と面会した。これは異例だと思う。『仏政府を甘く見ないように』とのサインとも読める。仏政府が反撃に出る展開もありえる」

 ―マクロン仏大統領は支持率が20%台に落ち込んでいます。回復のため、ルノーの日産に対する支配力を維持・強化させるという成果を求めませんか。
 「支持率のプラスになる案件とは思えないが、失敗できない案件とはいえるだろう」
帝京大・フランク教授

日刊工業新聞2018年12月4日

後藤 信之

後藤 信之
12月09日
この記事のファシリテーター

ゴーン容疑者逮捕を契機にルノーとの資本関係を「対等」なものに再構築したい日産を仏政府がけん制。対して日本政府は静観というのが今の状況だ。日産、ルノーで問題を解決するのが理想だが、仏政府の出方によっては、日本政府が動かざるを得ない局面が来るかもしれない。両政府の思惑で連合に、経済合理性を無視した新たな歪みが生じれば、3社が共倒れになりかねない。

この記事にコメントする

  

ファシリテーター紹介

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。