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電子部品を熱から守れ、京大が熱流を最適化する計算法

「トポロジー最適化」を応用
電子部品を熱から守れ、京大が熱流を最適化する計算法

樹脂製筐体の表面に熱流の誘導縞を配置(京大提供)

 京都大学の西脇真二教授らは、製品表面や内部の熱の流れを最適化する計算手法を開発した。製品形状の設計に使われる「トポロジー最適化」という計算手法を熱流の設計に応用した。最も優れた熱の流し方を理論的に求めることが可能になる。電子基板上で熱から守りたい電子部品を避けるように熱を流しつつ効率的に空冷するなど、複雑な熱設計に提案していく。

 物体中の熱の伝わり方を最適化して効率的な熱の流れを求める。熱伝導性の違う樹脂の配置や比率を最適化し、特定部位に熱が流れにくい筐体(きょうたい)を設計した。さらに筐体の表面に金属の縞(しま)構造を作り、縞に沿って熱を流す。

 開発に当たり方向をもったベクトルデータをトポロジー最適化で扱う手法などを考案した。筐体を熱が流れる向きの分布を求め、その上に縞が自発的にまとまる自己組織化アルゴリズムを利用して縞の構造を生成する。すると縞構造に沿って熱の流れが加速される。

 実際に樹脂製筐体の表面にメッキで金属縞を作り、熱回避や放熱がうまくいくことを確認した。

 今後、縞構造の炭素シートを貼り付けるような簡単な製造法を開発する。

 研究室では水冷式ヒートシンクの流路構造と熱伝導を最適化することにも成功している。2次元での熱流最適化に加え、3次元での最適化にも成功。3Dプリンターなどの製造技術とトポロジー最適化を組み合わせれば、高い冷却効率の部品を実際に作れる。

 筐体での最適化実証は内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)で実施した。
日刊工業新聞2018年12月28日

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