中小企業のIT対策、事務機器各社がお手伝い

クラウド連携する複合機増加、対策サービス提案は商機

 事務機器(OA)各社が、中小企業のセキュリティー対策に力を入れている。富士ゼロックスは低コストで導入できる包括的なセキュリティー支援サービスを発売し、リコージャパンも対策を啓発する取り組みを始めた。中小は大手企業に比べてITへの投資が限定的になってしまう課題がある。こうした中、OA各社はセキュリティー対策を新たな付加価値としてサービス開発を加速している。

 富士ゼロックスは中小企業向けに低価格で導入できる包括的なインターネットセキュリティーサービス「ビート/ソロサービス」を発売した。オフィス内に専用機器を設置することでネットワークや機器の安全性を確認するほか、専用のオペレーションセンターが24時間365日遠隔監視も実施する。基本サービスを月額6800円から提供している。

 リコージャパンは情報処理推進機構(IPA)と連携し、IPAなどが創設に関わった「セキュリティーアクション」制度の普及を支援する取り組みを本格的に始めた。同制度は中小企業が自ら、セキュリティー対策に取り組むことを自己宣言するもので、2段階に区分けされる。第1段階では、ウイルス対策ソフトの導入やパスワードの強化など5項目への取り組みを宣言するのみで、実践のハードルは低い。

 同社は全国に約400拠点を持ち、中小企業との豊富な取引実績がある。まずは首都圏を中心に同制度に関連する研修会を展開。ICT事業本部の辻井葉子シニアコンサルタントは「まずは手軽にセキュリティー対策を考えている経営者を支援していきたい」と説明する。

 OA各社がセキュリティー対策に力を入れる背景には、中小企業を取りまくIT対策の実態が影響している。IPAの調査(2016年度)によると、情報漏えい対策などを定めている企業は従業員100人以下の場合で26・8%、小規模企業になると約13・7%にとどまった。経営者の中には「実際に被害を受けないと、重要性を認識できないケースもある」(辻井シニアコンサルタント)と対策は道半ばだ。

 一方、OA各社としても、複合機などのハード機器とサービスを合わせた一体販売にシフトするのに伴い、サイバー攻撃への対策は重要なソリューションの一つ。特にクラウド連携する複合機が増える中でこの傾向は一層高まっており、中小への対策サービスは商機にもつながる。

 近年のサイバー攻撃は、大企業のサプライヤーである中小企業に狙いを定め、そこから取引先の大企業のデータへと不正アクセスをもくろむケースもある。中小にとってサイバー対策は取引の信用を得る上で欠かせない対策になりつつある。こうした中小のニーズが増えるのに伴い、OA各社のセキュリティー対策サービスの動きも活発になりそうだ。
(文=杉浦武士)

日刊工業新聞2018年12月7日

  

ファシリテーター紹介

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。