地方観光地の「2次交通」充実、理想と現実

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故岡本太郎が「太陽の塔」製作に影響を受けたといわれる、なまはげの面(秋田県男鹿市)
 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に、秋田・男鹿のナマハゲをはじめ10件の「来訪神、仮面・仮装の神々」が登録された。日本各地の特色ある文化や風俗が、世界に発信されることで、地方への外国人観光客(インバウンド)誘客効果に期待も大きい。一方で地方の観光地には、観光バスや自家用車による来訪を前提とする場所も多く、公共交通で移動する個人の訪日客への配慮も必要だ。

分かりやすく


 地方の観光地にとって、新幹線駅や空港から目的地までの交通アクセス「2次交通」の充実は課題だ。観光関係者には「不便な場所でも魅力があれば観光客は来る」という考えも根強い。だが個人で日本を訪れる旅行客に来てもらうには、分かりやすく、使いやすい交通は欠かせない。

 ナマハゲで知られる秋田県の男鹿半島は、秋田駅からJR男鹿線に直通列車が乗り入れる。しかし半島に点在する景勝地や水族館、民俗資料館といった観光スポットは終点の男鹿駅から、いずれも十数キロ離れている。路線バスはあるが「基本的に生活路線」(観光施設事業者)で、観光には使いづらい状況だ。

周遊利便性向上


 JR東日本は観光活性化と鉄道の利用促進を狙い、県や市、観光事業者らと「男鹿の二次アクセス整備推進協議会」を設立。2016年春、男鹿線の列車に接続して半島の主要観光地を周遊する前日予約制の乗り合いタクシー「なまはげシャトル」の運行を始めた。

 18年夏には週末やお盆期間に限り、主要便を予約不要の乗り合いバスとして運行。乗り放題料金を設定して周遊利便性も高めた。その効果もあって「すでに昨年度通年の乗車実績に迫っている」(県観光振興課)という。

 男鹿ではJR東が積極関与して、需要を喚起するバスの運行を実現した。地方の観光地における2次交通や周遊交通の充実は理想的だが、現実の問題として採算性は厳しく、赤字分を誰が負担するのかの議論は尽きない。

地域間競争


 訪日客には、京都や箱根など東京―大阪間で定番の観光地を周遊する“ゴールデンルート”の人気が高い。だが2回目以降の来日では、地方に足を伸ばして食や体験を楽しむ傾向が強いとされる。

 地方はゴールデンルートと比べて、訪日客の受け入れ態勢で遅れていると指摘される。訪日客を呼び込むには交通やトイレ、決済手段、多言語対応などインフラを準備し、地域間競争に臨まなければならない。今後は各地で立ち上がる日本版DMO(観光地経営法人)を中心に、地域の交通を観光の視点で戦略的に再構築することも必要になるだろう。
(文=小林広幸)

日刊工業新聞2018年12月4日

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