“異業種連携”に踏み切った日本酒業界の狙い

“化学反応”を起こして進化に挑戦

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ヤンマーと連携して発売した梅酒をアピールする沢の鶴の西村社長(左)
 アルコール飲料の多様化から消費者の嗜好(しこう)が変化する中、異業種と“化学反応”を起こすことで、日本酒の進化に挑戦している。時代をけん引してきた「男酒」(硬水で作る日本酒)で知られる兵庫・灘、「女酒」(軟水で作る日本酒)で知られる京都・伏見はともに国内の代表産地だが、新商品の開発や技術伝承をめぐり業種を超えた連携の動きが目立っている。

 創業300年の歴史を持つ沢の鶴(神戸市灘区)はヤンマーと酒米を共同開発し、今年2月に純米大吟醸酒「沢の鶴 X01」を発売した。ヤンマーが持つ農業機械や情報通信技術(ICT)を活用し、酒米生産の効率化に取り組んだ。

 両社は10月、ヤンマー本社ビルの養蜂場で採取した蜂蜜を古酒に仕込んだ梅酒も発売。沢の鶴の西村隆社長は「両社の発想や強みを生かし、若い女性などを対象に新たなアプローチを仕掛けたい」と意気込む。

 櫻正宗(神戸市東灘区)も創業300年超の老舗酒造会社。この9月、ネスレ日本(同中央区)と共同で「キットカット」のご当地チョコレート菓子を開発した。兵庫県の代表的酒米「山田錦」を用いた大吟醸を粉末化し、チョコレートに仕立てた。初の共同開発に取り組んだ櫻正宗の山邑太左衛門社長は「お酒が苦手な人や、国内外の人にも味わってほしい」と狙いを説く。

 伏見酒造組合(京都市伏見区)では7月、大阪ガスと共同で酒米を品質評価する技術を開発した。大ガスが持つ、コメ粒の吸水状態を画像解析する装置を酒米にも応用。吸水した精白米の外観変化と吸水率の相関関係を明らかにした。

 従来は技術者の経験に頼っていた酒米の吸水工程を科学的に解明した。同組合の増田徳兵衛理事長は「(日本酒を造る)蔵人の人数が減る中、技術伝承の支援につながる」と期待を寄せる。

 黄桜(同)は京都市産業技術研究所などと組み、2017年に日本酒の製造工程における発酵状態を数値やグラフにより評価できるようにした。この技術を使って、同社から生酛(きもと)山廃特別純米酒「山田錦」が製品化された。カギとなる試薬キットは、分析材料を手がける信和化工(同)が開発した。

 味を“見える化”したことで「外国人の好みに合う日本酒を効率的に開発できる」と黄桜の若井芳則専務は話す。市場が縮小傾向にある国内から、海外市場深耕も狙っている。

 老舗酒造会社は個々の持ち味を生かしつつ、新たな挑戦に踏み切った。業界の活性化にもつながるか、注目が集まる。
(文=中野恵美子、日下宗大)

日刊工業新聞2018年11月22日

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